なぜ要介護者が"カジノ"でみるみる元気に? 《常識破りのデイサービス》アメリカ視察で一発奮起した社長が変える「日本の介護」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

利用者の家族からも、「家ではしゃべらなかった父が明るく話すようになった」「認知症で何もできないと思っていたけれど、麻雀を楽しむ父の姿を見て嬉しくなった」などの声も。

なかには、「やっと本人に合うデイサービスが見つかった」と涙を流す家族もいるそうだ。

特に男性の場合、「介護を受けていることを周囲に知られたくない」「子どもっぽいレクが嫌だ」などの理由から、デイの利用を控えてしまう人も多い。

だが、ラスベガスでは月間の利用者数、約1300名(全店舗)のうち、7割を男性の利用者が占める。一般的なデイ施設の場合、男性利用者の数は2割程度であるというから、その差は歴然だ。

森さんは「男性向けに作ったわけではない」と強調するが、この強みが店舗拡大の大きなカギに。現在は関東、中部、九州地区を中心に20店舗展開し、年内にさらに1店舗開業予定だ。

送迎車
「デイ通いをご近所に知られたくない」との声に応え、送迎車はロゴだけを施した黒いワンボックスカーを使用(写真:編集部撮影)

海外視察で見た“選べる暮らし”を日本でも

開業前、海外の介護事情を調査するべく、ラスベガスやフロリダのサンシティなどリタイアメントコミュニティも視察してきたという森さん。当時のことをこう振り返る。

「『介護保険のないアメリカでは、高齢者の暮らしはどうなっているのだろう?』と、現地に向かうと思わぬ発見がありました。どの高齢者も生き生きとしていて、『カジノが好きだからラスベガスに住み始めた』『海沿いで暮らしたいから西海岸に引っ越してきた』など、住まいも日々の過ごし方も多様な選択肢の中から自分で選び、人生そのものを楽しんでいるように見えたのです」(森さん)

一方、国内に目を向けると、全国に4万3000ものデイ施設がありながら、サービス内容は画一的で選択肢が乏しい。「自分で選びたくても選べない現状」に強い課題感を持ったという。

「カジノ型デイ」は、そうした課題への、森さんなりの一つの答えでもある。

「もちろんパチンコや麻雀が好きな方もいれば、苦手な方もいるでしょう。大切なのは、自分の意思で選べるだけの多様な選択肢があること。僕らはその選択肢の一つとして、選ばれる努力をし続ける必要があるのだと思います」(森さん)

【写真】「ラスベガス」という名前に納得! 新感覚デイサービスの様子(15枚)
伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事