なぜ要介護者が"カジノ"でみるみる元気に? 《常識破りのデイサービス》アメリカ視察で一発奮起した社長が変える「日本の介護」

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事業化のきっかけは、介護事業所で現場責任者をしていた頃の、苦い経験だった。

「あるとき、ケアマネジャーから、『なかなか家から出たがらない』という要介護の男性を紹介されました。このままだとご本人の体力も落ちてしまうし、ご家族の介護負担も増してしまう。ご家族も心配なさっていたので、デイにお誘いしてみたのです。

案の定、抵抗感を示されたので、『今日は面白いところに行きましょう! 森が居るので絶対面白いですから』とお伝えすると、渋々オーケーしてくださって。でも、施設に着いた途端、『騙したな! 帰る!』と怒鳴られ、やむなく昼食後に帰宅となりました。

ご家族からは『午前中だけでも出られてよかった』と感謝されましたが、その後、再び家から出なくなってしまったことが本当に申し訳なくて。そのことがずっと心の奥に引っかかっていたのです」(森さん)

森さんの心の引っかかりは、ほかにもあった。デイの利用者は、「楽しいから」「面白いから」といった前向きな動機ではなく、家族に言われて「仕方なく」来る人が多かったことだ。こうした現状に胸を痛めていた森さんは、「高齢者が自ら行きたいと思える場所を作れないか」と思うようになった。

そこでヒントになったのが、2012年のアメリカ視察時に見た、ラスベガスでの光景。杖をつこうと、車椅子であろうと、カジノを思いきり楽しむ高齢者の姿を見て、「これだ!」と直感。カジノさながらの遊びを取り入れれば多くの高齢者の心をつかめると確信した。

利用者からのクレームを材料に一新

施設運営にあたり、最も重要視したのは利用者から受け取ったクレームの数々だ。

「病院のような雰囲気が嫌」という声に対しては、内装、インテリアをカジノにふさわしい華やかなものに変更。介護用ベッドもなくし、リクライニングソファを導入した。

「スタッフがポロシャツやジャージを着ていると、いかにも介護されている感じがして嫌だ」――。

そんな声に応えるべく、ユニフォームを一新。男性スタッフはディーラー風のベストをまとい、女性スタッフは品格とホスピタリティあふれる装いを意識した。特に女性用のユニフォームで参考にしたのは、シンガポール航空のCAの制服だ。

スタッフの制服
細部にわたり、「介護感」を排除。ユニフォームも利用者に好評だそう(写真:編集部撮影)
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