「日本は水が豊富な国だ」と思い込んでいる人が知らない"真実"、地下水の《見える化》が秘める大きな意味

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Water Scapeが提供するのは、地下水の使用状況や地域水循環の状態を科学的に分析・可視化する「地下水の健診サービス」だ。工場などで使用されている井戸の状態を診断し、設備の老朽化、水収支の過不足、外部要因の影響までを含めて多角的に評価する。

サービスは4段階で構成される。最初のステップは「初期診断」だ。ここでは企業が保有する過去の井戸データや使用実績などを整理・分析し、水の利用状況を棚卸しする。

熊本地域の地下水流れ
熊本地域で構築された地下水モデルによる地下水流れの可視化例(画像:Water Scape提供)

「人間でいえば健康診断。今までの記録を見ながら何がわかっていて、何がわかっていないのかを明らかにします」(川﨑氏)

次に行うのが、詳細な調査設計。地下水の水位や涵養量の推移を把握するために、現地での観測や流域単位での水収支のモデル化を行う。とくに同社は「外部要因(気候・地形・土地利用など)」と「内部要因(井戸管理・揚水量など)」の両面から現状を把握し、課題を洗い出すことに注力している。

熊本地域の地下水位観測データ
熊本地域の地下水位観測データの解析例。過去40年以上蓄積されたデータを分析することで、外部環境変化に対する地域の特徴を知ることができる(Kawasaki et al. <2023>: AGU Fall Meeting 2023, H31O-1674.を基に作成)

そのうえで得られた知見をもとに工場や地域での水利用を最適化するためのアクションプランを策定。必要に応じて、指標を設定し、モニタリングを継続することでPDCAを回す。

地下水の「見える化」で企業の現場が変わる

「診断を終えたお客様が、それだけで満足して終わることはほとんどありません。モニタリングしてほしい、設備の管理体制を見直したいといった声が出てきます。地下水という見えなかった存在が、見えるようになると、次に何をすべきかが浮かび上がってくるのです」(川﨑氏)

同社のサービスは、企業が社内外に対して「水リスク」への対応を説明するための材料を提供するという意味でも重要だ。経営層への水への投資説明、地域社会との信頼関係構築、投資家への情報開示といった場面でも、根拠に基づいた対話ができる。Water Scapeのサービスは、地下水を未来へ引き継ぐための「共通言語」を提供しているといえるだろう。

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