企業活動の基盤の1つは「安定した水供給」である。なかでも地下水は、工場など生産現場において重要な役割を担う。
かつて水を大量に消費してきたのは化学工業、鉄鋼業、製紙業などであった。だが、近年ではデータセンターの冷却水や半導体の洗浄水などにも大量の地下水が使用されるなど、テクノロジー産業が新たな水使用者として台頭している。
ミネラルウォーター産業も例外ではない。2024年度の国内生産量は502万9000キロリットルに達し、1982年の58倍にまで増加している。いずれも社会インフラを支える産業群であり、それをさらに支える地下水は「インフラのインフラ」ともいえる存在である。
世界に目を向ければ、インド北部やアメリカ・カリフォルニア州でも井戸の枯渇が深刻化。地域住民や産業との間で水資源をめぐる対立が生じている。
さらに近年、気候変動の影響により降水パターンは大きく変化している。豪雨と干ばつが極端化する中で、地下水の涵養量(水が地中に浸透し、地下水として蓄えられる量)も不安定になりつつある。従来の「年間を通じて安定して利用できる水源」という地下水のイメージは再検討を迫られているのかもしれない。
こうした状況を踏まえると、地下水がどのように利用され、どのようなリスクがあるのかを、科学的に「見える化」する必要がある。見えない資源を可視化しなければ、適切なマネジメントも意思決定も不可能である。「見える化」は、リスク管理、設備投資判断、説明責任の遂行といった多くの経営課題に対する出発点となる。
地下水を「見える化」するという挑戦
安定した水の供給が経済活動の根幹をなすという前提に立ち、地下水という「見えない資源」にいち早く対応を始めたのが、サントリーホールディングスから独立したWater Scapeという企業だ。同社は、地下水の「見える化」に特化したコンサルティング型サービスを展開している。

「水がなければ、モノは作れません。当たり前のようで、実は意識されにくい現実です。とくに地下水は見えないため、マネジメントの対象として認識されていないことも多い。見えなければ、管理もできないし、将来への不安も払拭できない。だからこそ『見える化』が必要と考えたのです」。そう語るのは、同社の川﨑雅俊代表である。
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