「部下に異動の辞令を出したら退職届で返された」…。上司の伝え方、何がまずかったのか? 部下の感情に《火をつける3つの要素》を解説

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筆者自身もコンサルタントなので、ついつい客観的なデータを使って語ってしまうのだが、あるとき「データで言われたら反論できない。反論できない息苦しさを覚える」と反論され、ハッとしたことがあった。

自分しか見えていないと、このように相手に「息苦しさ」を覚えさせてしまうのだ。

今回の場合、決定打は以下の上司の一言だった。

「転勤を打診されると、若者の半分は退職を考えるらしいな。君もその半分のうちの一人か? そんな理由で退職を決意するなんて、論理的におかしいと思うよ」

人はそれぞれ違う。ある人は論理で動き、ある人は感情で動く。ある人は権威に従い、ある人はその場の空気が行動するキッカケになる。

この若手は、未来をイメージできないと不安になるタイプだった。数字の羅列では、千葉へ異動した後の自分が見えない。どんな毎日を送るのか。どんな成長があるのか。それが思い描けなかったのだ。

もし上司がこう話していたら、結果は違ったかもしれない。

「実は千葉支店の田中さん、君と同じ2年目で関西から異動したんだ。最初は大変だったらしいけど、関西での経験を活かして今では支店のエースだよ」

「君も関西で培った粘り強さがある。千葉の速いテンポと組み合わせれば、誰にも真似できない営業スタイルができるかもな。まさに田中さんがいい例だよ」

「3年後、君に後輩ができたとしよう。そのとき君は言うはずだ。『あの異動が転機だった』と。関西と関東、両方を知る貴重な人材として、すごい強みを身につけているからだよ」

過去から現在、現在から未来へ。具体的な人物と重ね合わせる。成功のイメージを描かせる。相手の頭の中で鮮やかに描けるような情景を表現して語ろう。そうすると、相手の心は動くかもしれない。それがストーリーの力だ。

感情に火をつける3つの要素

感覚的な人を動かすには、ストーリーの中に次の要素を盛り込んでいこう。3つのポイントを紹介する。

(1)共感できる登場人物

相手と似た境遇の人、同じ悩みを乗り越えた人。そんな「モデル」を探し出して、エピソードトークを披露するのだ。そうすることで、聞き手も自分と重ね合わせやすいだろう。

(2)具体的な場面描写

「朝の通勤電車で富士山が見えるんだよね。特に、前日に雨が降った翌日の富士山は、泣きたくなるほどキレイなんだ」「あの食堂で食べられるランチは、海鮮丼が安くておいしいよ。朝に収穫したばかりのイカやエビが乗っててね」など、ちょっとした日常の一コマが、相手の頭の中で鮮明に描けるように話そう。ディテールにこだわることが大事だ。

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