私自身、『シン読解力』に掲載されている「リーディング・スキル・テスト(RST)」に挑戦してみたところ、残念ながら全問正解とはいきませんでした。瞬時の理解と判断には、情報処理の「余白」が必要なのです。
余計な情報や刺激で脳の作業領域が埋まってしまうと、本来必要な思考や記憶の操作が難しくなります。これは子どもだけでなく、大人の仕事や判断力にも影響します。一旦整理して、一つのことに集中する方が、脳には合っているのです。
納得しない子どもには「データ」で示す
中高生に「スマホはダメ」と言っても、素直に聞いてくれないことは多いですよね。「それってあなたの感想ですよね?」と返されるような空気感もあるかもしれません。
実際、今の子どもたちは動画やSNSを通じてデータやエビデンスに触れて育っているため、感情論や曖昧な言葉には敏感なように思います。
インフルエンサーのひろゆきさんによる「それってあなたの感想ですよね」というフレーズが、2022年の小学生の流行語ランキング1位になったかと思います。子どもたちに「スマホは良くないよ」とただ言っても「あなたの感想ですよね」と言われてしまうでしょう。
そういったただの感想みたいなものを信頼しないという価値観が、昔より強い気がします。これも私の感想ですが(笑)。
実際に、世界的な学力調査であるPISAの結果を見ても、「科学的リテラシー」の国別順位が2018年の5位から2022年には2位まで上がっています。
私が学校などで話をすると、「3時間ダラダラと『ながら勉強』をするより、30分集中して宿題を終わらせて、それから遊びに行ったら2時間半も多く遊べるよ。そっちの方が得じゃない?」と伝えるだけで、子どもたちの反応が大きく変わります。
ある生徒は「これまで親の話は無視してきたけど、今日のデータに基づく話を聞いて、初めて本気でスマホに気をつけようと思った」と話してくれました。
大切なのは、押し付けるのではなく「正しい情報」を共有し、一緒に考えること。そのベースになるのは、やはり日頃の信頼関係です。
そうした私たちの調査が掲載された書籍『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新聞出版)や、私の師であり「脳トレ」を監修していた川島隆太教授の本などを読んでいただき、正しい情報を伝えていただくことがスタートになるかとは思います。
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