あのドラッカーも驚いたという日本の人材育成法…その根底には100年変わらない"老舗の流儀"がある

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そして、「手を抜かずにやり遂げたときに感じる喜び」を心と体で実感させることを最優先にします。こうした経験の積み重ねが、手抜きのない誠実な仕事を実現させ、揺るぎない精神と、それに伴う技術を身につけさせていくのです。

答えを「外」に求めるのではなく「心の声」を聞く

昨今、業務効率化やミス防止などを目的に、業務手順やルールのマニュアルを作成する企業は少なくありません。しかし、越後湯沢にある1075年創業の老舗旅館「高半」は、マニュアルに頼らない人材育成を行います。

第36代女将・高橋はるみさんはこう言います。

『100年続く老舗企業が大事にしていること』(日本実業出版社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「目の前にいるお客様に、どう接すればよいか。それをマニュアルのような『自分の外』に求めてしまったら、すぐ限界がきます。お客様の立場になってみたら、どうしてほしいか。それを『自分の心』に聞いてみる。その答えにしたがってみればいいと思うんです」

正解はマニュアルにあるのではなく、自分の心の中にある――、そのことに気づかせることが教育だというのです。

正しい行動とは、上司の指示や手順書のとおりに機械的に動くことではない。「いま、この状況で、自分は何をすべきか」と自問し、自らの良心の声にしたがって行動できる。それができたら、正解だというのです。そのため、マニュアルは「あえて作らない」と女将はいいます。

従業員が接客に際し、判断に迷うような場面で、女将はこう問いかけるのだそうです。「どうしたらいいと思う? あなたなら、どうする?」。 そして、従業員からの回答には、どんな回答でも、こう返すのだそうです。「そう、それでいいのよ。わかってるじゃない」。

女将は「答えは自分の内にある」ことを実感させようとするのです。これにより、従業員は自分の判断で行動する自信が身についていき、指示待ちではなくなります。判断の基準を外に求めず、自らの「良心の声」に耳を傾ける。これが、心のこもった個別対応、すなわち「神対応」につながっていくのです。

日比野 大輔 労務管理事務所フォージョウハーフ代表、(一社)100年企業研究会代表理事、特定社会保険労務士

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ひびの だいすけ / Daisuke Hibino

1973年生。2002年開業以来、労使紛争の解決を支援するものの、「法律で人は幸せになれない」と痛感し、稲盛和夫主宰の盛和塾に入塾。以来、同盛和塾大阪で人事労務講座の運営を行う。

全国の社労士と立ち上げた、老舗企業を研究する「100年企業研究会」の成果をまとめた「100年就業規則」が、審査員から「世界にインパクトを与える」として2019年グッドデザイン賞を受賞。DVD「100年企業の就業規則」(日本法令)がベストセラーとなる。

現在は「100年就業規則」や「日本型チームの作り方」を主軸のテーマに、国内外の経営者や全国の社労士に向けた講演を多数実施している。

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