「ある寒い朝、下級の奉公人に…」異例の出世を遂げた田沼意次、その理由がわかる逸話と現代人にも通じる遺訓7カ条

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意次は、人と違う行儀・作法をして世間から変人扱いされることも戒めていますが、それもまた尋常でない出世をしてきた意次が培ってきた世間知と言えるのかもしれません。

意次の家来への情けを「心から家来のことを思いやっているのではない」「裏には悪い魂胆があって、それを隠すためにやっているのだ」と非難する向きもありますが、果たしてそうでしょうか。

前述の寒い朝の逸話にしても、悪い魂胆というよりは、差し入れをしてお供の人々に気持ちよく働いてもらおうという想いからのものでしょう。

意次は家来の労をねぎらい、すぐに褒美を与えたといいますが、これは意次が人心操縦術に長けていたことを示すものであって、それほど非難されるようなものではないでしょう。

賢くて世間知に長けた人物像

意次は同時代人から「はつめい」(発明)と評されました。「はつめい」とは賢いという意味です。先に登場した大岡忠光も主殿頭(意次)を「発明だが、年若」と評価しています。また当時の落書にも「はつめいは 人に田沼ぬ 智恵袋 名も徳もとれ 主殿も家頼も」というものがありました。意次は発明の人だというのです。

確かに意次は賢い人であったでしょうが、前掲の遺訓などを見ていたら、世間知に長けた人物とも言えるかもしれません。意次の言動から、現代人が学べることは多々あるでしょう。

(主要参考・引用文献一覧)
・藤田覚『田沼意次』(ミネルヴァ書房、2007)
・鈴木由紀子『開国前夜 田沼時代の輝き』(新潮社、2010)

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

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はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数
X: https://twitter.com/hamadakoichiro

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