「遺品を何から何まで捨てると、もう1人の自分から『おまえ心なしだな』と言われているような心境になるんです。しかし、最優先すべきなのは遺族の生活です。第三者による『思い出まで捨てるわけじゃない』という言葉があれば、罪悪感を抱くことなく遺品を処分できると思うんです」

孤独死の現場に遺族が立ち会うことは少ない
作業は予定通り4時間で完了。2階に散乱していた生ゴミもすべて撤去されたが、やはり腐敗臭はわずかに残る。

「作業はあと掃き掃除くらいなんですが、ちょっとクリーニングまでしていこうかなと思っています」
二見氏はそう言い、洗剤を使ってキッチン、洗面台、風呂場、トイレなどを磨き上げていく。
「依頼者さんも本来すごく悲しくて、でも感傷に浸れる時間もなく、バタバタと片付けている。その中でほんのちょっとだけでも、気持ちが軽くなるお手伝いができたんじゃないかなと思います。お話ししていてもやっぱり、心の余裕が生まれていったような気がするんです」

通常、孤独死の現場に遺族が立ち会うことは少ないという。罪悪感に苛まれ、現実を直視できないからだ。しかし、依頼主である兄弟は現場に立ち会い、自らキッチンの汚れを落とそうとしていた。
「住んでいた方との思い出に向き合っているような感じがして、いつも以上に気持ちが入った現場でした」
最後は依頼主と一緒に隅々まで掃除をし、作業は終了した。


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