寝室に残された遺品からは、男性の人物像が見て取れる。ハンガーラックには10着近いスーツが綺麗にかけられ、スラックスにはズボンプレッサーで折り目がつけられていた。脱衣所にはカミソリがストックされていて、身だしなみに気を使っていた様子がうかがえる。
「これだけスーツがあるってことは、きちっとした人なんやと思いますね。ちゃんと仕事していた人なんやと思います。来客もめちゃくちゃ多いやろうから」

二見氏が話すように、この男性がゴミ屋敷の住人であると思う人は周りにいなかったかもしれない。ゴミの上にスーツを置くような様子もないのだ。想像の範囲ではあるが、部屋の状況を誰にも相談できない、あるいは相談してはいけないという悩みがあったのかもしれない。
「生ゴミが散乱して、これだけお酒の量も多いと、やっぱり心の病気というか、心のSOSみたいなものがあったんじゃないかなと思います。よく“お酒が原因で”と言いますけど、お酒が第一の原因にはならないんですよ。何かほかの原因があって、お酒に依存してしまっているからこうなっているんです」
遺族も男性がどんな問題を抱えていたか、遺体を発見した後もなお、知ることはできなかった。

遺体に湧いたハエは大きくなる
現場に入ったスタッフは全部で6名。4時間で作業は完了する予定だ。
「孤独死と言っても死後7~8日なので、体液はそんなに出ていません。臭いも少ないほうです。10段階で分けるとすれば、レベル1~2といったところでしょうか。なので、一気に作業していきます」

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