「積み上げた 俺の処遇を 一瞬で またぎ越えてく 爆上げ初任給」売り手市場に泣く採用担当の悲哀つまった【採用川柳・短歌】

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まずは【最優秀賞】から紹介する。

基本給 低いと言われて ベア検討 社内の声より 学生の声(大阪府 ポテトさん)

今年の最優秀賞は、近年の初任給引き上げラッシュと売り手市場を象徴する一句が選ばれた。面接の場で学生から自社の給与水準についてストレートな指摘を受け、慌ててベースアップを検討するという、人事にとっては冷や汗ものの光景が目に浮かぶ。これまで賃上げ交渉の主役は労働組合であり、その交渉は社内の論理や業績見通しに基づいて行われてきた。

しかし、この作品が示すのは、そのパワーバランスが大きく変化し、「外圧」、すなわち採用市場での学生の声が、経営の重要判断である賃金改定の直接的なトリガーになっているという驚くべき現実である。長年尽くしてきた社員の声よりも、まだ見ぬ学生の声が優先されることへのやるせなさをにじませつつも、それなくしては優秀な人材を確保できないという切迫感が伝わってくる。採用担当者の悲哀と企業の生存戦略が凝縮された、まさに時代を切り取った作品と言えるだろう。

次の【優秀賞】は2作品を選出した。

積み上げた 俺の処遇を 一瞬で またぎ越えてく 爆上げ初任給(東京都 がんも3号さん)

最優秀賞の作品と対をなすように、賃上げのもう一つの側面、すなわち「既存社員の不満」を見事に詠んだ一首である。採用競争に勝つために、多くの企業が初任給の大幅な引き上げに踏み切っている。その結果、入社以来、長年かけて積み上げてきた金額を、入社間もない新人が手にすることになる。初任給の引き上げに伴い、既存社員の処遇も見直されることになるものの、勤続年数の浅い若手社員には手厚く、長年会社に貢献してきた中堅・ベテラン社員の給与の上げ幅はごくわずかという現象が各地で起きている。中には、既存社員の待遇改善にまで手が回らず、初任給のみを引き上げた結果、給与の逆転現象が起きている例もあるという。

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