窪田:たしかに大人になってからの学びは人生を豊かにしますね。私もいつも好奇心を刺激されています。
田村:その好奇心が人間ならではの強みですよね。最近では「AIとの競争」といった言われ方をしますが、AIはあくまでも伴走者。AIには行き先は決められません。人間の好奇心をサポートしてくれるのがAIなので、そもそも役割が違います。好奇心がなければAI時代を生き抜くのは厳しいと思います。
シンガポールにいるからこそ見えてきた日本の魅力
窪田:現在、田村さんはシンガポール国立大学リー・クワンユー公共政策大学院で、日本のビジネスリーダーに向けて「アジア地政学プログラム」を教えていらっしゃいます。プログラムを受けた方たちにはどんな変化がありましたか?
田村:1つはビジネスの拠点を日本から海外に移す人が増えましたね。それに海外に移り住む人も。もう1つは、客観的に日本を見て、チャンスに気付く人も増えていると思います。
東南アジアのよさを知ってもらおうと始めたプログラムですが、私自身、長くシンガポールに住んでいて感じるのが、日本のよさなんです。
日本に住んでいた頃は、当たり前すぎてわからなかったことが、見えてくる。これは娘の影響なのですが、娘は幼少期からシンガポールで育っているので、私とは違うところで日本のよさに気付くわけです。
窪田:なるほど、娘さんは完全に外からの視点で日本を見ているのですね。
田村:私が日本のニュースを見ながらブツブツ文句を言っていると、「なんでいつも文句を言うの? 日本にはいいところがいっぱいあるよ!」と(笑)。インターナショナルスクールに通う娘の友人たちも、みんな日本が好きなんですよね。旅行の行き先も、日本が選ばれる。
窪田:そんなに人気があるんですね。やはり観光地として魅力があるのですか?
田村:そうですね。円安というのもありますが、でも値段よりも日本の文化や歴史が魅力なのだと思います。それに公共交通機関が整っていて、治安もいい。それに東南アジアには、日本ほどノーベル賞やオリンピックで金メダルを取っている国はありません。もちろんこれからは東南アジアでも増えていくでしょうけれど、そういった活躍は「すごい」と思われています。