受験偏差値で全国トップ・灘高校の卒業生が「神戸に残らない問題」に凝縮されている"地方都市の危機"の本質
この中のダイナミックなネットワークという点に着眼すると、「東京の中の地方」が地方都市と組むことで新産業を創出できるのではないか。
地方の魅力は、もっと磨きをかける必要がある。ブランド論に詳しい神戸大学の石井淳蔵名誉教授が主張するように、「らしさ」はブランドの最も大事な部分だ。地域固有の文化、歴史、風土が生み出す「らしさ」が、その地域の本当の価値となる。
例えば、政令指定都市の中で人口減少が最も深刻な神戸市は、阪神・淡路大震災(1995年)の被害もあり、街の風景が大きく変わってしまった。これにより、神戸「らしさ」が失われたという声が聞かれる。
だが人口減少の原因は、観光客がイメージするような表面的な「らしさ」の喪失だけではない。もう1つの大きな問題が、この地から高付加価値型の新しい成長産業が生まれてこないことである。現在、スタートアップ育成に力を入れているようだが、果実を得るにはまだ時間がかかりそうだ。
東京一極集中が生じてしまう根本原因
神戸市には灘高校という有名な進学校がある。高校受験の偏差値では、複数の模試で開成高校などを抜いて(あるいは並んで)全国トップ。2025年の進学実績を見ると、東京大学77人、京都大学50人、大阪大学14人、神戸大学7人となっている(卒業生214名)。もちろん、社会で活躍されている卒業生は多い。
だが、その多くが神戸で働いているわけではない。関西に実家があるものの東大に進学した灘高出身者の多くは、そのまま東京に残るか、海外へ飛び出している。こうなるのも、灘高卒業生の多くが行きたくなるような企業が地元になかったからではないか。
神戸に残っている卒業生は医師、研究者、法曹関係といったプロフェショナルが目立つ。灘高卒業生のほとんどが神戸に戻っていれば、新しい高付加価値産業が生まれていたのでないか、と悔やまれる。
ちなみに、11月19日に任期が満了となる久元喜造市長は神戸市の出身で、灘高、東大卒の元・自治・総務官僚である。久元氏も新卒で自治省(当時)に入省した後、神戸に帰らず東京の本庁から官僚キャリアを歩み始めた。
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