私立の中高一貫進学校でも「予備校は必須」? 早稲田合格へのリアルな道のり。親が直面する「予備校費用100万円超」の現実
こうして予備校通いが始まり、本人が第1志望に決めたのは早稲田大学だった。「旧帝大を目指している子が多いから、早慶ぐらい入らないとちょっと恥ずかしいかなと思って」と敬志君。
模試の成績はD判定だったがさほど焦る様子もなく、粛々と勉強を続けていた敬志君に、やがて次なる選択の時期がやってきた。高校3年生は古文漢文が選択科目になるのだ。
3年生のクラス決めに関わることのため、2年生の段階で履修するかしないかを選ばなければならない。また、学校の正規の授業として受けるのだから、予備校のように途中でやめることはできない。どうするかを考える中、学校の先生がこんな話をしてくれた。
「古文漢文ができない人がこのクラスをとっても多分ちんぷんかんぷんで終わると思う。それよりも、ちょっとその辺で薄っぺらい問題集を買ってきて入試直前に自分で勉強するほうがいい」
これもあながち間違っていないかもしれない。仮にこれが東大を目指す生徒をターゲットにしたような授業の場合、古文漢文に苦手意識の強い子にとってはかなり苦痛の時間になる。敬志君は第1志望を早稲田の創造理工学部と決めていたこともあり、古文漢文を手放すことを決めた。
頭を悩ませた「出願先」
高校3年生の11月、本人が書いた出願スケジュール表を前に三者面談が始まった。この学校では教員、生徒、保護者の三者で出願大学を確認し、子どもが作った表に親が署名して学校に提出することになっていた。
「過去に出願について、子どもの希望と親の希望が食い違うトラブルがあったようで、双方確認の上、親が署名して出すことになったようです」(頼子さん)
第1志望は変わらず早稲田大学の創造理工学部と決まっていたが、問題はそれ以外の出願先だ。本人に「浪人は絶対にしたくない!」という希望があったため全落ちは避けたいところだった。
となると、万が一のことを考えていろいろな偏差値層の大学を受ける必要がある。まず決めたのは第2志望の学校だった。担任の勧めで第2志望に国立大学を入れることになったのだが、ここで親子の意見が食い違う。
自宅から通える大学に絞ると横浜国立大学と、東京工業大学(現東京科学大)が残ったのだが、担任のお勧めは東工大だった。
東工大の場合、共通テストでは大学が設けた一定の基準を超えていれば通過でき、二次の個別試験の配点が高いため、敬志君ならばさほど共通テストの勉強をしなくても合格の可能性があるということだった(編集部注:受験当時の情報のため、必ず最新の入試要項をご確認ください)。
「息子は共通テストの勉強をしなくてもいい、という言葉に惹かれてしまったようです。でも、東工大は何度も本人が見学に行っていましたけれども、魅力を感じないとさんざん言っていた大学でした。受けやすいという理由で大学を選んで本当にいいの?って、この点では大学受験に関して親子で唯一、意見がぶつかりました」(頼子さん)
話し合いの結果、第1志望がダメでも納得して通えるところにしようとなり、横浜国立大学の理系学部を第2志望と決めた。その他に受けたのは慶應義塾大学と明治大学、東京理科大学。いずれも工学分野を志望に入れた。
模擬試験では明治と理科大はA判定がでるものの、早稲田と慶應は一番よくてD判定だった。「“先輩たちもそうだったから大丈夫だ”って、最後まで本人は焦っている様子はありませんでした」(頼子さん)。
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