私立の中高一貫進学校でも「予備校は必須」? 早稲田合格へのリアルな道のり。親が直面する「予備校費用100万円超」の現実
そのうち、1コマの授業の中で前半に図工、後半に算数という具合でぶつ切れ授業となることが増えていく。それもあってか、敬志君は母親に「学校の授業、全然集中できないし、面白くないから塾に行きたい」と言い出すようになっていた。
「3学期の終業式の日に一人50枚ものプリントテストが返されたんです。他のクラスに比べて本当に遅れていたので、塾は学校への本人の不満から入塾した感じでした」
入塾前はさほど中学受験について考えることはなかったが、通塾を始めると周りには中学受験をする子が多く、自然と本人の希望で中学受験を選ぶことに。無事に第1志望の学校に合格して入学を果たした。
そんな敬志君が大学受験を意識しはじめたのは高校1年生の夏だった。
きっかけは、学校で出された宿題だ。大学を見学して感想を書き、キャンパスで撮影した写真を添えて提出するというものだった。
「あの宿題がなかったら、大学のことを考え始めるのはもっと遅くなっていたかも」と頼子さん。学校が宿題として出してくれたおかげで本人が大学入試を意識するようになったという。
友達の中には「北海道大学へ一緒に見学に行く人募集」など、見学をイベントに仕立てて仲間を募る子たちもいた。敬志君もこの誘いを受けていた。
「本人には東北大を目指したいという気持ちがあったようですけれど、病気のことがあるので、そこは強く本人に“命が大事だから”とお願いし、自宅から通学できる大学で折れてもらいました」(頼子さん)
高2で「予備校へ通いたい」と希望
秋になると学校から文系クラス、理系クラスの希望調査があった。敬志君の場合、圧倒的に理系科目が得意だった。中でも物理がとても得意で、数学も計算ミスは多いものの、嫌いではなかったという。一方で、暗記科目の地理や歴史はすこぶる苦手。というわけで消去法を取り理系クラスを選択した。
学校は男子校で、理系を選ぶ生徒が多く、敬志君の学年でも8クラス中文系クラスは3クラスのみだった。塾には通っていなかったが成績は「中の上」あたりをキープ。だが高校2年生の冬になると敬志君は「予備校に行きたい」と言い出した。
「(予備校に)通ってない子がいなくなり出して、さすがにそろそろ行かないと、って思ったようです」(頼子さん)
そこで、比較的自宅からも近い場所にある駿台予備校と河合塾の見学に訪れた。
「勉強の中身の違いは大差なくて、違うのは1コマの授業時間の長さくらいでした。本人と話したら、そんなに長く集中力続かないよねということになって、1コマの授業時間が短い駿台を選びました」(頼子さん)
取材を機に予備校にかかった費用を調べてもらったところ、高校2年生の冬期講習代と3学期の講座代は総額で25万円。高校3年生はここからかなり増え、季節講習代などを含めると総額108万円がかかっていた。
「改めて認識してみると恐ろしい数字でした」と頼子さん。難関大学を目指す子の場合、子どものほうから「予備校へ行かせて」と頼むケースも多いのだが、田崎家もまさにそういう状態になっていた。
私立中高一貫に通いながらこのお金が出せるというのはやはり経済的に恵まれた家庭だからだ。事実そうなのだが、経済力が許す限り、子どもの願いを叶えてやりたいと思ってしまうのが親心だろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら