成功する経営者は「塩の辛さ」を知っている 松下幸之助が説いた「うまく行く会社の条件」

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だから、まず汗を流し努力することを勧めなければいけないのに、最初に知恵を出せと言ってしまっては、社員は机の前に座って、とにかく知恵を出そうとする。当然のことだ。しかしそんな知恵は、社会の波に揉まれていないから、ほんものではない。

「塩の辛さ、砂糖の甘さというものは、何十回、何百回教えられても、ほんとうにはわからんやろ。なめてみて、初めてわかるものや」と松下はよく言っていた。

比較的うまくいっている会社の社長に会ったとき、話してもそう能力のすぐれた人だとは思わないことがある。しかし、その会社の経営はとてもうまくいっている。それに反して、見るからに頭のいい人で、言うことも筋が通っているなと感じる人が社長になっているのに、あまりうまくいっていない会社もたくさんある。

うまくいく会社の社長はコツをつかんでいる

松下は、長く商売をする間に、自分の取引先でそのような例をたくさん見てきた。そしてある講演で、次のように話したことがある。

「うまくいく会社の社長は、そう頭のいいことはなくても、どこかで経営のコツをつかんでいます。一見うかがいしれないものを内に持っていると思います。その持っているものは何かといいますと、塩の味を知っているということです。塩の味はどんなものかという講義は受けておらないけれど、日々味わっているから、塩の味というものはよくわかっている。そういう人だろうと思います」

汗を流し、涙を流し、努力に努力を重ねるうちに、ほんものの知恵が湧いてくる。身についてくる。努力をし、汗のなかから生まれた知恵はほんものである。ほんものの知恵だから、人を説得することができる。動かすことができる。感動させることができる。だから迷わずに、とにかく努力をすることである。

「きみ、奥義を極めた先生から3年間水泳に関する講義を受けたとしても、すぐに泳ぐことはできないやろ。やはり泳ぐには、水につかって、水を飲んで苦しむという過程を経ることが必要やな。そのあとにようやく講義が役にたってくる。そういうもんやで」

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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