危機時こそ長期視点で投資する--マイケル・J・キャヴァナー JPモルガン・チェース 資金管理・証券保管部門CEO
リーマンショックから3年半余りが経過したが、米国の大手銀行経営者から見て米国経済、世界経済の現状はどうか。米国および国際的な金融規制強化はどのような影響を与えるのか。JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーにおいて2004~10年までCFO(最高財務責任者)を務め、現在は資金管理・証券保管部門CEO(最高経営責任者)であるマイケル・J・キャヴァナー氏に聞いた。同氏は現在の同社会長兼CEOであるジェームズ・ダイモン氏の右腕として同社入社以前からキャリアを積んでおり、次期CEO候補の1人でもある。
--現状の米国経済をどう見ているか。
全体として日々回復傾向にある。当社はクレジットカードビジネスを行っているが、消費者の行動、マインドは金融危機のただ中の最も弱かった時期に比べてかなり強含んできている。
一方、企業の顧客については、当社は中堅企業向けのビジネスを含め全米各地で行っているが、非常に経営状況はいい。最悪期における採算最善努力が奏功して収益は堅調。手元流動性も潤沢だ。当社では、こうした中堅企業向けの融資が現状、前年比で10~15%伸びている。まさにこれから(設備投資など)前向きの企業行動が始まろうとしている。
もっとも、住宅部門の停滞や政治情勢の不確実性が企業の視界を悪くしている。失業率もまだ高すぎる。ただそれでも米国経済は徐々に力強くなっている。
--米連邦準備制度理事会(FRB)は14年終盤まで超低金利政策を継続するとしているが、そのとおりになると思うか。
まだわからない状況だが、バーナンキFRB議長は米国経済が望ましい水準より軟化する状況が残っているかぎりは緩和的な金融政策を続けるとしている。まずは米国経済がしっかりした回復基調に乗るかどうかだ。
--世界経済もまだまだ波乱要因が残っている。まず欧州経済をどう見ているか。
欧州経済は今後も注目していかなければならないが、欧州の政策決定者が真剣に問題に取り組んでおり、3~4カ月前に比べ状況はかなり好転した。LTRO(3年物の長期資金供給オペ)の実施によって、欧州での銀行危機の懸念は取り除かれた。問題の完全な解決までには条約改正なども必要で、あと数年はかかるだろうが、今後も適切な政策が採られることで、欧州発のグローバル危機は起きないだろうと見ている。