危機時こそ長期視点で投資する--マイケル・J・キャヴァナー JPモルガン・チェース 資金管理・証券保管部門CEO
たとえば、FDIC(米連邦預金保険公社)は銀行に関しては接収することはできたが、ベア・スターンズは銀行ではなく投資銀行(証券会社)であって、米国政府として接収する方法がないということで問題の解決が困難となった。そのため、こうした規制を強化することは支持してきた。新たな規制全体の80%程度は支持している。
今、ドッド・フランク法やボルカー・ルールを通じて米国で提案されている規制については現在、業界やグローバルなコミュニティからのコメントを求めている時期にある。最終的なドラフト(規制案)が出るころには、業界が感じている正当な問題意識に関しても反映されるだろうと考えている。
それには2つある。1つは、規制を改善するということと、それによって銀行がマーケットメーキングできる能力が鈍化するのではないかということとのバランスの問題だ。もう1つは、一部の金融サービスが米国からオフショアに移ってしまうのではないかという懸念がある。ただ今後数カ月を経て、最終的なドラフトが出るころには、適切なバランスを持った形になっていると期待している。銀行としても、市場参加者としても、違和感が感じられないようなものになるのではないか。
--規制によって銀行の収益への影響はどうなると予想するか。
確かに、こうしたルールの変更によって米国のリテール・バンキングの収益はかなり低下した。ただホールセール(法人向け)・バンキングに関しては、必要な自己資本が上がることで自己資本利益率(ROE)は低下するものの、収益性の水準は規制強化後にどの銀行が勝者になり、敗者になるかによって決まってくると思う。たとえば、米国以外に業務が移ってしまうようなことがあれば、1つの懸念材料ではあるし、マーケットビジネスが米銀以外に移ってしまう可能性がある。
米銀に対してかなり厳しい制約ができ、米銀は米国以外でもその規制下で業務を行わなければならないことになると、そうした規制の対象にならない米銀以外の銀行に対して不利な状況に置かれかねない。
包括的に言えば、どのような規制になっても、それによって顧客のニーズが変わるわけではない。ただ、銀行のサービス上の価格設定で規制がかかったり、マーケットビジネスをするうえで制約がかかったりすれば、銀行のサービスに対する顧客の価値観が変わってくるだろう。
当社は顧客中心のビジネスを行っており、ワールドクラスの投資銀行、資金管理・証券保管業務、資産運用業務の能力があることで、グローバルな法人顧客に対してサービスを提供することができる。当社はこうした戦略の下で、すでにあるグローバルな営業基盤をさらに強化していける機会に恵まれていると思う。