危機時こそ長期視点で投資する--マイケル・J・キャヴァナー JPモルガン・チェース 資金管理・証券保管部門CEO
--M&Aも重要な戦略と位置づけているか。
当社はまず内部成長を最重要と考えている。そして幸いにも、すべての業務分野で内部成長を遂げる機会が潤沢にある状況だ。そのため、各ビジネスで投資を行い、内部成長を実現してきた。グローバルな金融機関向けの営業基盤もしっかりしており、投資銀行と資金管理の部門でも、ここ2年半から3年の間に、主に米国以外で多国籍企業向けのコーポレート・バンカーを約200人増やした。また、20カ国でのトレジャリー&セキュリティーズ・サービスにおける能力の拡大も行ってきた。
M&Aに関しては、内部成長を加速することができるのであれば前向きに検討はするが、戦略的に不可欠とは考えていない。あくまでも顧客基盤の構築を内部的に行うことが可能と考えているが、もし買収のチャンスがあって、財務的にも戦略的にも意味があるのであれば考えるということだ。
--JPモルガンは08年の金融危機の最中にベア・スターンズとワシントン・ミューチュアルを買収したが、これら2社は現在、グループにどう貢献しているか。
ベア・スターンズについては、危機の中で当社が助けたということだが、それによってバンカーの数が増えたことと、プライム・ブローカレッジ(ヘッジファンド向け売買管理・融資業務)とコモディティ(商品先物)の業務に関して少し能力が拡大したことはある。ただ周知のとおり、週末に買収を決断しなければならなかったわけで、戦略的に行った買収ではなかった。買収は役には立ったが、すでに当時、当社には投資銀行業務で十分に強力な能力があった。
一方、ワシントン・ミューチュアルに関しては、カリフォルニア州に個人向けの支店が約1600店あり、それまで同州にプレゼンス(勢力)がなかった当社は営業基盤を大きく強化することができた。
--米国では昨年7月からドッド・フランク法(金融規制改革法)が施行され、いわゆるボルカー・ルールが今年7月から導入される予定など金融規制が強化されており、欧州を含め、規制強化は国際的な流れになっている。こうした規制強化は経営にどのような影響を与えているか。
まず最も重要なことは、われわれはよりよい、より堅牢な規制に対するニーズがあることに関してはつねに支持してきたということだ。というのも、金融業界は金融危機のときに、規制がもっと必要だということを経験したからである。