危機時こそ長期視点で投資する--マイケル・J・キャヴァナー JPモルガン・チェース 資金管理・証券保管部門CEO
--アジア、新興国の経済についてはどうか。
感触としてはいい。アジアはこれからもグローバル経済を牽引していくだろう。もちろん、いろいろな問題があり、成長が鈍化する可能性もあるが、重要なグローバルストーリーの一部を成すのがアジアだ。
日本の状況についても感銘を受けている。3.11(東日本大震災)から1年経った今、経済はかなり強い状態にある。3.11は日本の顧客にとっても、世界の顧客にとっても大きなショックだったが、今ポジティブな状況になってきたことはいいことだと思う。
--過去数年の金融・経済危機の中でJPモルガンはどのようなビジネス戦略を採ってきたか。
当社の最も重要な戦略は顧客に照準を当てることだ。現在、欧州の金融機関、事業会社に対するエクスポージャーは150億ドル相当あるが、あくまでも欧州にとどまるというのがわれわれの意向だ。日本に1年前に大地震が襲ったときもそうだったし、米国の金融危機の際にもベアー・スターンズやワシントン・ミューチュアルを買収したことによって、われわれが金融機関の強さの源となってきた。
創立以来200年以上業務を行ってきた当社としては、非常に厳しい状況のときに当社の持てる強みと資本を使って顧客のために貢献することが重要と考えている。状況が良いときには誰でもそこで事業を行うことができるが、状況が最も厳しいときこそ、その場にいることが重要だ。
--そうすることでJPモルガンはさまざまなビジネスでシェアを獲得してきたか。
そのとおりだ。当社の3大グローバルビジネスとしてトレジャリー&セキュリティーズ・サービス(資金管理・証券保管業務)、インベストメント・バンキング(投資銀行業務)、アセット・マネジメント(資産運用業務)があるが、投資や拠点を増やし、顧客との関係を深めて、われわれの持つ能力を拡大している。グローバルなさまざまな市場でプライベート・バンカーやコーポレート・バンカーを補充するなど、当社の能力拡大のための投資を行っており、それは米国でも同じだ。
当社の重要な経営のテーマは2つある。1つはリスクに照準を当てて、リスク管理をしっかり行うこと。私は金融危機の最中を含めた6年間、CFOを務めたが、金融危機においても当社のリスク管理はうまく行われ、自己資本比率も下がらず、これについては誇りに思っている。他のグローバルな、米国の金融機関のように損失を出した四半期が当社にはなかった。2つ目のテーマは、経営においては長期的な視点で物事を考えるということだ。だから、決して投資をすることをやめない。