セブン&アイが断ったのではなくクシュタールが一方的に手を引いた、世界のコンビニ好きには朗報。セブンは攻勢の時だ
興味深いことに、セブン&アイが北米事業運営会社への出資を受け入れる代わりに、クシュタールへの出資を求めたことも明らかになった。
クシュタールはこの対案を「統合事業の運営の見通しを損なう」として退けた。つまり、われわれはあなたを買えるが、あなたはわれわれを買えないというロジックだ。果たして、囲い込みをしていたのはどちらなのか。
正式提案に至らなかった1株当たり2600円という買収提示額は、買収交渉の報道が最初に出た数カ月前の株価に対してわずか17%の上乗せに過ぎなかった。
買収規模はクシュタールの時価総額に匹敵する水準で、膨大な借り入れが必要となる案件だった。また、日本の独占禁止法当局もしくは米国の反トラスト法当局によって却下される可能性も常にあった。
セブン&アイのより冷静な対応からは、同社がすでに次のステップを見据えていることがうかがえる。この1年にわたる混乱の結果、経営陣の大幅な刷新が行われた。
その効果はまだ不透明だ。ただ、コンビニ事業を市場のトップに育てた井阪隆一氏の社長退任は痛手だ。今年5月に社長に就任したスティーブン・デイカス氏は日本人の母を持つ。父親が米セブン-レブン加盟店のオーナーで、10代の頃に父のコンビニを手伝っていたという経歴の持ち主だ。業界への理解は深い。
デイカス氏は今、一息ついている場合ではない。フランチャイズ店のオーナーのように攻勢に出るべき時だ。セブン&アイは、クシュタールが買収に動いた背景にある株価低迷や資本効率の悪さという課題に真正面から取り組まなければならない。
セブン&アイは依然としてアクティビスト(物言う株主)の標的であり、17日に株価が10%近く下落したことで、新たな動きが出てくる可能性もある。
クシュタールの提示額を超える株価を実現することが、デイカス氏の最優先課題だ。そしてもちろん、あの「たまごサンド」のクオリティーも維持しなければならない。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
著者:コラムニスト:リーディー・ガロウド
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