「がんでも治療受けられず死去」「生命を担保に自白を迫られ…」えん罪だった《大川原化工機事件》や角川歴彦氏の長期勾留、なぜ起こった?
公訴取り消し後、同社社長らと相嶋氏の遺族は国家賠償請求訴訟を起こし1審、2審とも国の違法性が認められた。国は上告を断念し、判決が確定。東京地検と警視庁の幹部が同社を訪れ謝罪している。

劣悪な拘置所の環境
勾留とは、被疑者・被告人に証拠隠滅や逃亡の恐れなどがある場合、拘置所などに身柄を拘束することだ。通常は検察官の請求に基づいて、裁判所が可否を判断する。勾留後、本人や弁護士は保釈を請求できるが、請求を認めるかどうかも、検察官の意見などを踏まえて裁判所が決定する。
角川氏、相嶋氏とも「罪証(証拠)隠滅の恐れ」を理由に勾留が認められ、複数回にわたる保釈請求も却下され続けた。共通するのは2人が罪を認めなかったことだ。
角川氏の弁護団によると、五輪汚職事件で身柄を拘束された12人のうち、事実関係を概ね認めた9人については、8人が起訴直後に保釈され、最後の1人の勾留期間も45日に留まった。一方、否認した3人の勾留期間は97~226日に上り、角川氏は突出して長い。
一方、大川原化工機事件で逮捕された3人も無罪を主張し、相嶋氏は死亡したが他の2人は332日もの間勾留された。
拘置所では、排せつの際のプライバシーも十分に守られないなど劣悪な環境に置かれる。また弁護団のメンバーで監獄人権センター代表の海渡雄一弁護士によると、拘置所の医療体制は予算不足から外部の医療機関の水準を下回っている。
また一部の拘置所幹部に「罪を犯した人への医療は、今の水準で構わない」という意識も根強く残っているため、医療体制の改善も進みづらいという。
海渡氏は「否認している人を劣悪な環境に置くことで、つらい状態が続くよりもウソの自白をしたほうがましだ、という考えに仕向けようとしている」と批判した。
実際に、角川氏の元には服役中の受刑者から「持病があり拘置所の劣悪な環境から抜け出して治療を受けたいため、ウソの自白調書にサインした。今は後悔している」という趣旨の手紙が寄せられたという。
角川氏は「拘置所に置かれること自体が拷問に近い。私は自白しなかったが、ウソの自白をさせられた人、そして相嶋さんのように亡くなった人もいて、それぞれが苦境を味わっている」と語った。
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