「がんでも治療受けられず死去」「生命を担保に自白を迫られ…」えん罪だった《大川原化工機事件》や角川歴彦氏の長期勾留、なぜ起こった?
角川氏は「僕も弁護団の先生たちも戦っていたのに、自分の体調のせいで妥協を余儀なくされ、情けなかったし悔しかった」と振り返る。
角川氏は、刑事事件の判決を待たずに2024年、長期勾留が憲法や国際人権法に規定された「身体の自由」を侵害するなどとして、国家賠償請求訴訟を起こした。
7月の第3回口頭弁論後、記者会見と報告会を開き「身体だけでなく、『生命』を担保にとって自白を迫る『人質司法』の存在を明らかにし、司法には社会常識と乖離した『闇』の部分があることを多くの人に知ってもらいたい」と話した。
がん発覚も保釈却下され、治療できず死去
えん罪によって勾留された結果、病気の治療が遅れ死に至った人もいる。「大川原化工機事件」で逮捕された相嶋静夫氏だ。
噴霧乾燥機メーカー、大川原化工機は2020年3月、輸出した機器に軍事転用の恐れがあるとの疑いが持たれ、外国貿易法違反などの容疑で社長や相嶋氏ら3人が逮捕された。
相嶋氏は拘置所内で胃痛を訴え、検査で進行性の胃がんと判明した。しかしその後も積極的な治療は行われず、家族が「がんの専門医を受診させたい」と保釈を請求しても「罪証隠滅の恐れがある」として再三却下された。
11月にようやく勾留執行停止が決まって、外部の医療機関に入院したが転移が進んでおり、2021年2月に死去した。
その数カ月後の2021年7月、検察側は突然公訴取り消しを申し立て、事件がえん罪だったことが明らかになった。相嶋氏はまったく必要のない逮捕・勾留によって、治療へのアクセスを奪われていたことになる。
相嶋氏の長男は「国による父への虐待を伝えることで、人質司法がこの世に存在することを裁判所に認めさせたい」と、角川氏の訴訟に陳述書を提出。7月の会見と報告会にも登壇し「検察官、裁判官は証拠を集め、精査して判断を下すという『プロ』としての努力を怠った」と厳しく批判した。
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