労働市場における競争が激化する中では、働く個人から選ばれない企業は生き残れない。生き残りを図るため、「働く個人が魅力を感じて共感するパーパスを掲げる」「多種多様な働き方のメニューを用意する」「働く個人がやりがいを感じるように業務を設計する」など、企業にはこれまでにない施策が求められている。
まさに、企業経営の最重要課題が、労働市場で選ばれることなのだ。
優秀な人材を採用できる会社に仕事が回ってくる
商品市場における競争のモノサシは、売り上げや利益をはじめとした財務諸表である。資本市場における競争のモノサシは、上場企業であれば株価だろう。では、労働市場における競争のモノサシは何だろうか。
さまざまなモノサシがある中で、最も有効なモノサシは「エンゲージメントスコア」であると筆者は考えている。スコアが低い会社は、社員の労働生産性が上がらず、辞めていく社員も増える傾向にある。すると、さらにスコアが下がる。新卒や中途で新たに人を採用しようにも、スコアが低い企業に有能な人材は集まってこない。
また、エンゲージメントスコアは、業績と連動することがわかっている。エンゲージメントを高めることは、労働市場での競争力を上げるだけでなく、商品市場、資本市場での競争力向上にもつながるのだ。
これまでの時代は、「仕事があるから人を採用する」というのが常識的な考え方だったが、筆者は発想を逆転させるべき時代に突入したと見ている。つまり、先に採用ありきで、「優秀な人材を採用できる会社に仕事が回ってくる」という発想だ。
今後は、自社にとっての優秀な人材の獲得に成功した会社、また、人材に働きがいを感じてもらうことに成功した会社が繁栄する。つまり、労働市場の変化に適応できた会社が、商品市場でも勝ち組になっていくということだ。
■おわりに
環境変化が激しい今、企業にはさまざまな社会的要請が突き付けられている。常に組織変革が求められ、そのための手法なども次々と話題になる。
こうした社会的要請や話題の組織変革手法を理解しつつも、手段が目的化しないように注意を払わなければいけない。
女性管理職比率しかり、ダイバーシティしかりだが、多くの企業で手段が数値目標になり、その達成にとらわれ、いつしか手段が目的にすり替わってしまっている。
トレンドワードに踊らされることなく、しっかりと本来の目的を捉え、本質を見抜くことが大切だ。それができれば、環境変化に左右されることなく、時代を超えて人も組織も輝く存在になれるだろう。
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