もちろん、政治的に「台湾の独立を守れ」と主張してもいい。でも企業は商売が重要だから、意図的に曖昧にこの問題に対応してきた。かっこよくいえば「戦略的曖昧さ」といえる。複雑な国際関係を見て見ぬふりをする、すぐれた手法だ(これは皮肉ではない)。
だから、日米あたりの企業のトップに聞いてみればいい。中国は「台湾は中国の一部だ」と主張するが、それに対してどう思うか、と詰問されると「承認」ではなく「認知」しているというはずだ。
中国政府は世界の航空会社に、台湾を中国に変更するよう要求したこともある。「Taiwan, China」と表記した企業もあったし、国名としての「台湾」を削除しつつも、「台北」といった都市名のみを表記するという形で対応した企業もあった。これは事実上、中国政府の意図も含みつつ、ギリギリの線で台湾を非政治化しようとする試みだった。
その他、台湾を含まない中国地図がデザインされたTシャツを販売したとしてアパレルメーカーが謝罪に追い込まれたこともある。台湾が欠落した地図を広告に使ったとしてコスメ企業が炎上したこともある。
企業はどう対応すべきか
私は「企業は商売が重要だから、意図的に曖昧にこの問題に対応してきた」と書いた。しかし、現実的には、もっと複雑化している。
もちろん、中国政府の要求に従うのは簡単だ。しかし、欧米、日本、台湾市場におけるブランドイメージの毀損は見逃せない。私は、さほどの影響ではないとは思うものの、今回のセブン‐イレブンの炎上でも、少なからぬ消費者から「もうセブンには行かない」といったネガティブな反応があった。

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