老いるほど「心と体が弱る人」と「強くなる人」の決定的な差――和田秀樹氏が指摘、人生100年時代を謳歌する3つの秘訣

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このNK細胞というのは、体内にできた出来損ないの細胞を掃除してくれる免疫細胞で、この細胞の活性が高ければガンになりにくいとされています。ところが順天堂大学医学部特任教授の奥村康先生らの研究では、この活性が40代になると20代の半分、70代になると10分の1に落ちるというのです。80代ともなるとさらなる低下が予測されます。

そうなると、もともと免疫活性が低い高齢者ほど、心の具合が悪くなることは危険なこととなってきます。免疫活性がさらに下がり、そのダメージが大きくなるからです。

アメリカとは違い、死因の第1位が心臓病ではなくガンである日本では、メンタルヘルスを良好に保つことがガン細胞を減らし、確実に長寿につながると私は信じています。年をとっても健やかに楽しく過ごすためには、心を健康に保つことが第一なのです。

それなのに、高齢になってから不安やストレスが強くなり、人生の楽しみや喜びを見失ってしまう人が多くなります。これは、脳内の“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが、加齢とともに分泌されにくくなるからです。

また、老化が進むと、脳内の感情をコントロールする部位である前頭葉の萎縮が進み、感情が衰えます。このことも、不安やストレスを感じやすくなる要因です。

こうした脳の構造的な変化に加えて、定年退職や、愛する家族、ペットなどの喪失体験、食欲低下や便秘、不眠などの身体的不調が重なると、人は、悲観的な考えになりやすくなるのです。

これを逆手にとるとこうなります。

たとえば、年をとることが不安でしかたがない、死ぬことが怖くてじっとしていられない。そんな考えにとりつかれたときは、脳の構造の変化と身体的不調が重なっただけにすぎないのです。

心が弱くなってしまったとか、1人に耐えられないとか、そんなメンタル的な理由ではありません。落ち込むのは、気持ちや心が弱いからだと思い込む方がいらっしゃいますが、これは間違いです。心には、本来、強いも弱いもないのですから。

前頭葉を鍛えて老化を防止する

私は、高齢者専門の精神科医です。多くの患者さんと接してきた中で「体と脳は確実に老いてゆくけれども、心だけは、自分次第で若返る」ということを知りました。

湧き上がる不安やストレスは、80代ともなると、宿命です。前頭葉が萎縮し、セロトニンが減れば誰でも暗くなってしまいます。だからといって、前頭葉の老化、すなわち「感情の老化」を放っておくと、ボケやすくなり、体も見た目も加速度的に老け込んでいくことになるのです。

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