能登地震で被災→全店舗再開で「懐かしい味が帰ってきた」 北陸で愛され半世紀の《690円らーめん》。「味噌か塩か」で県民性が出るワケ

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8番らーめんは、夏の「猛暑対応商品」だけでなく、春・秋・冬も特徴のある商品を毎年、打ち出している。季節限定商品として登場し、毎年の定番になったものもある。例えば、牛もつらーめんは1990年代の冬から、トマトらーめんは2013年秋から登場し、親しまれている。増田さんは次のように話す。

「春はゆず風味のスープ、秋は酸辣湯麺など、ほかにも季節限定商品はいろいろあり、8番らーめんは『季節感のあるラーメン屋』として親しまれています。暑い時期にラーメンは敬遠されがちですが、定番の野菜らーめんはさっぱりしていますし、冷やしもいろいろ用意しています。ぜひ、1年中食べに来てください」

8番らーめん、被災11店すべて再開 「懐かしい味が帰ってきた」

最後に、能登半島地震後の北陸の現状もお伝えしておきたい。2024年1月1日に被災した8番らーめんは石川県内の珠洲、輪島、能登柳田、富来、高浜、田鶴浜、七尾西、七尾、宇ノ気、内灘、城北南の11店舗。全壊した宇ノ気店、内灘店は建て替えた。半壊や、駐車場が液状化した店もあったが修繕し、2025年3月26日に最も液状化がひどかった内灘店の再オープンをもって復旧完了。被災した店は以前の営業体制を取り戻した。

とりわけ被害の大きかった能登地区では8番らーめんの復旧が、被災者の背中を後押ししたらしい。輪島方面にボランティアに行った知人から「輪島店の電気が点灯したのを見て、皆さん大喜びしていた」と聞いた。北陸人に8番らーめんの思い出を聞けば、「週末に家族で食べに行った懐かしい思い出の味」「仕事帰りに、ご飯を作る元気がないと駆け込んだ」などの声が挙がる。日常の食を支えてくれた8番らーめんの復興は、被災地の何より大きな励みとなった。

昼時には店舗の前に長い列ができることもしばしばだが、順番受付の発券機があるので金沢駅店では、まずチケットを取り、お土産を買ってから戻ればよい。思った以上に客の回転が早いので要注意。タブレットでオーダー後、商品の到着も早いので、急ぎ足の客にはうれしい。

時間に余裕があれば、8番らーめん金沢駅店を出てすぐ左手に、「九谷焼転写シートでうつわ作り体験」ができる工芸品のお店がある。予約なしでOK。白い無地の九谷焼の器に、好きな転写シールを自由に貼って、世界に1つだけのオリジナルの九谷焼を作ることができる。手作りの土産物はいかがだろうか。完成品は焼成して後日届けられる。

うつわ作り体験
九谷焼転写シートでうつわ作り体験

あまり時間がなければ、金沢駅東広場に設置されている「やかん」の形をしたオブジェをご覧あれ。金沢21世紀美術館の開館や金沢駅東広場の完成を記念して2004年、2006年に開かれた「金沢・まちなか彫刻作品・国際コンペティション」の最優秀作品の一つである。「やかん」は街のシンボルとなっており、金沢市民はここで待ち合わせするという。

「やかん体、転倒する。」
「やかん体、転倒する。」(三枝一将さんによるオブジェ)
金沢駅の玄関口・鼓門
金沢駅の玄関口・鼓門。右手奥に「やかん」のオブジェがある
【画像を見る】本文では紹介しきれなかったメニューも。夏にうれしい特製タレのざるらーめん(1玉600円)に、瀬戸内レモンが爽やかな冷麺(1玉770円)はこんな感じ
※本記事に登場するメニューの価格はすべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。
若林 朋子 フリーランス記者
わかばやし ともこ / Tomoko Wakabayashi

1971年富山市生まれ、同市在住。元北國・富山新聞記者。新聞記者時代は20代にスポーツ全般、30代に教育・研究・医療などを担当した後、退社しフリーランスとなる。Webメディア・雑誌・書籍・広報誌などで執筆。聞き書きなどで携わった書籍は『世界も驚くおいしいパン屋の仕事論』(PHP研究所)など。北陸を拠点に活動し、魅力的な人・場所・出来事との出会いを発信していきたい。

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