つまり、前回の記事「日本の財政問題で流される『5つのうそを暴く』」(6月28日配信)の最後で引用した黒田(東彦・前日銀総裁)書簡における「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」という表現は、現在、成り立たない。もはや、日本は「普通の」後進国、つまり、自国通貨の為替レート変動によって経済が揺れ動く「普通の」「小国」になったのだ。
経済学でいう小国とは、市場で受け身に行動する国のことである。寡占的な力をもって市場に影響を与えるのが「大国」である。だから、日銀直接引き受けや、日銀特融などを行えば、テクニカルには名目上のデフォルト(債務不履行)は回避できるが、実質的には財政破綻する。
国債の民間取引はフリーズし(誰も買わないから)、財政破綻時と同様の財政再建策により国際金融市場の信認を回復するのが急務となる。つまり、実質上のデフォルト、実質財政破綻である。さらに、1992年の英国のポンド危機、2022年のトラスショックを見れば、実質財政破綻となる前に、財政危機は簡単にやってくる。
そして、2025年の現在、イギリスは、トラスショックと同じ財政懸念から国債暴落危機再燃の気配があるし、日本も同じだ。そして、トラスショックのときに比べれば、この先、急に回復する(2022年はコロナショックからの回復過程)という期待もストーリーも存在しない。
日本も、いまや国民も政治も円安を望まなくなった。ということは、日本売り、円売りで、日本を慌てさせることができる。だから、円安で海外投機勢が仕掛けることができる。株安円安で仕掛けて、債券もその流れなら売り浴びせられる。海外投機家が、日本売りをトリプル安で仕掛けられる大局的条件が整ったのだ。
欧州系金融機関が最大の新発長期国債落札者に
さらに、もう1つのとどめの条件まで成立してしまった。これは、この5月のことだ。いまや、ドル円でドルの調達が困難になっていることから、ドルを手放して円建て日本長期国債で運用すると利回りが5%をはるかに超え、米国債をはじめ、多くの欧州国債を上回る利回りが得られるようになってしまったのだ。
これは、貿易収支が大幅赤字になっていることが背後にあり、金融市場においては、さらにドルが大幅に不足していることがある。この結果、この利回りを求めて、日本の長期債、超長期債を海外勢が取引するだけでなく(取引高は従来海外取引者が主要勢力だった)、投資家として保有することになった。この5月は、欧州系金融機関が最大の新発長期国債落札者となったのだ。
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