「試合に向けて練習を積み重ねる感覚が楽しくて、エントリーしてからずっとワクワクしてました。本番もめちゃくちゃ楽しかったですね。あらためて、自分は水泳が好きなんだと実感しました」
「これは狙えるかも」初めて世界水泳を意識
自己ベストを更新したことで、「もう一度、日本選手権の参加標準記録を突破したいという目標が芽生えた」と当時を振り返る栁沢さん。
だが、どれだけマスターズで速く泳いでも日本選手権への出場資格は得られない。日本選手権に出場するためには、どこかのチームに所属するか新たに自分でチームをつくるかして日本水泳連盟に競技者登録し、公認競技会で参加標準記録を突破する必要があった。
「どうしよう? と考えて、父の勤めるスイミングスクールに所属して競技者登録できないかお願いしたんです」
父とその勤務先の協力を得て、日本水泳連盟加盟団体の大会に出場できるようになった栁沢さん。ジャパンオープン2024の予選を1位通過し、決勝では世界水泳の派遣標準記録の27秒33より速い27秒31で2位となった。
「当時の自己ベストが出たので『これは(世界水泳)狙えるかもしれない』と思い、そこから本気で世界水泳を意識して練習するようになりましたね」
そして2025年3月の日本選手権。栁沢さんは世界水泳の派遣標準記録より速い27秒15で泳ぎ、当時の自己ベストを更新して予選を2位で通過。決勝では派遣標準記録と同じ27秒33で2位となり、ついに世界水泳への切符を手に入れた。
「(世界水泳に)出られたらいいなとは思っていましたが、まさか本当に出られるとは」
決まった練習拠点もなく、コーチもいない。「不利」ともいえる環境の中で、なぜタイムを縮められたのか。栁沢さんはこう分析する。
「学生時代も楽しくて泳いでいたんですけど、多少の『やらされ感』があったんだと思います。でもいまは、自分でお金を払って、時間をつくって、好きで泳いでいる。気持ちの面で水泳を楽しめているのが一番大きいと考えています」
「好きに勝る上手なし」という言葉がこれほどふさわしい人がいるだろうか。

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