《世界水泳2025》栁沢駿成(27)「仕事終わりに260円の市民プールへ…」大学卒業後に一度は水泳を諦めた営業マンが日本代表になったワケ

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だが、2019年9月、大学4年生だった栁沢さんはインカレ出場の後に水泳部を引退。同年11月にマスターズに参加したのを最後に水泳から遠ざかった。

「社会人になったらがっつり水泳をする環境はないだろうと思っていたので、水泳を卒業するのは自然な流れでした」

プールやジムに行くと「1日の密度」が濃くなる

2020年4月、大学を卒業した栁沢さんはプール設備の総合メーカー、アクアプロダクト(本社:東京都稲城市)に入社した。同社は初の新卒採用にあたって水泳部出身の学生に絞って採用活動を行っており、栁沢さんは就職エージェントから紹介されて試験を受けた。

「『プールを造る会社があるんだ、面白いな』と思いましたね。自分が泳いできたことがちょっとでも活かせるなら、という思いもありました」

栁沢さんはプールの濾過装置の営業マンとなった。設計事務所や施工業者のもとに通い、営業をかける日々。就業時間は平日9時15分〜17時30分。残業を済ませて会社を出るのは19時ごろだという。

こうして生活の中心は水泳から仕事になったが、元々体を動かすことが好きだったため、退勤後に運動をするようになった。

「当時はコロナ禍でプールもジムも閉鎖されていたので、走ったり、夜の公園で懸垂をしたりしていました」

2021年になってプールやジムが再開すると、仕事終わりに自宅や職場の近くのプールで泳ぐようになった。営業先から直帰できるときは、営業先の近くにあるプールに行くこともあった。

「仕事と家の往復だと、あっという間に1日が終わってしまうんですよね。両親がよく言っていた『1年があっという間に過ぎる』という言葉の意味がわかる気がしました。

でも1日の終わりに趣味の時間があると1日の密度が濃くなった気がしますし、気分転換にもなります。それで仕事帰りに泳ぎに行くのが習慣になりました」

やがて栁沢さんの水泳が「趣味」の域を超える転機が訪れる。

2021年11月、コロナ禍で中止されていたマスターズ水泳が再開されることに。「せっかく泳いだり筋トレしたりしているんだから、久しぶりに泳いでみたい」と2年ぶりにエントリーし、大会で自己ベストを更新したのだ。

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