教育改革の嚆矢となる「シモキタカレッジ」の挑戦 「互いからの学び」に込めた教育起業家の思い
どこかの国でも聞いたことのあるような話ですが、とりあえず授業に出て単位だけをもらえばよいとなったときに、強い危機感を覚えたハーバード大学やイェール大学が改革を行います。その改革の中心がイギリスの大学にあったカレッジという、人間関係が密で多様な学びのコミュニティの導入だったのです。
アメリカの大学がつくり上げた「成功モデル」
第2次世界大戦後、世界の覇権と共に教育研究の覇権国となったアメリカのトップ校は、カレッジを通じて学校への忠誠心や愛校心を培うことが、大学の競争力につながることに気づきます。
お金のない学生から授業料を徴収しない代わりに、卒業後大きな成功を収めた卒業生から多額の寄付を募り、卒業生ネットワークを駆使して運用することで教育や研究を行うというビジネスモデルをつくり上げたのです。
1980年代にイェール大のスウェンセンという人が、エンダウメント(基金)の運用モデルを確立し、アメリカの大学を世界のトップに押し上げるイノベーションとなりました。
こうして得た、学生一人当たりの支出に直すと日本の大学の20倍から30倍にも達する豊富な資金力を背景に、世界中からトップの研究者を大学に招く。よい教育を受けたいと世界中から優秀な学生がやって来る。カレッジでの密な学生体験が将来の寄付金をもたらす。この好循環が、世界でアメリカの大学が一人勝ちとなっている理由です。
堀内:なるほど。いまのお話を伺っていると、まさにマックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、ヨーロッパで発生した資本主義がアメリカに行ってどのように変容したか、端的に言うと、アメリカに行って資本主義はスポーツになったとウェーバーも言っていますけれども、それを大学でも見るような感じがしますね。
次に、いま話題のシモキタカレッジについてお話をうかがえればと思います。どのような思いでプロジェクトを起こし、何を実現しようとされているのか、お話しいただけないでしょうか。