地震保険、掛け金が高いのに保障が低いワケ 発生確率が高い賭けは分け前が少なくなる

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地震は想定されるリスクのなかでも最大級のものです。その被害額の大きさから、保険でも対処し切れない特異なリスクです。そのため、地震保険は一般の保険とは違い、どこの国でも特別な仕組みが講じられています。

リスク・マネジメントでは、想定されるリスクの対処法として、まずは回避すること、そして軽減すること、と教えます。地震のない国に移住すればリスクは回避できますが、これは誰もが簡単にできることではありません。住居を耐震構造にするとか、津波を防ぐ強固な防波堤を築くなどで一定のリスク軽減は図れます。しかしこのような軽減策は、決して万全のものとはなり得ないことをわれわれは東日本大震災から学びました。

そうなると、リスク・マネジメントで教える最後の手段はリスク・ファイナンスです。防ぎ切れないリスクには、せめて損失を金銭的にカバーできるように手立てを講じておこう、という考え方です。つまり、おカネを貯めておく、保険に入っておくことです。しかし、地震のために十分な貯金を準備できるのは相当の金持ちに限られます。そこで、一般庶民は保険に頼らざるを得ないことになります。

ところが、ここに大きな問題があります。地震の場合、リスクがあまりにも大き過ぎて、保険の仕組みでは対応し切れないのです。つまり、地震リスクは保険の限界を超えているのです。

地震保険では損害をすべてカバーできない

保険は通常、必要な保障額を十分に買うことができます。おカネさえ払えば、自分が望む十分な保障が手に入ります。ところがこの常識は、地震保険にはあてはまりません。地震保険には限度があるのです。日本では、セットで売られる火災保険の金額の最大で50%までしか入れません。たとえば、3000万円の火災保険に入った場合、地震保険はその半分の1500万までしか入れません。

3000万円の家が、地震で全壊する、津波で流されてしまう、地震による火災で全焼する。その場合、1500万円しか払ってもらえません。しかも火災保険では地震が免責となっていますので、火災保険の方からは一円も支払われません。つまり、失った家を地震保険で建て直すことはできません。

では、なぜ地震保険は必要な保障額まで入ることができないのでしょうか。

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