地震保険、掛け金が高いのに保障が低いワケ 発生確率が高い賭けは分け前が少なくなる

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その答えは単純です。損害額が大き過ぎるので、保険会社が尻込みしてしまうからです。自社で抱えきれないリスクを引き受ける場合、保険会社は通常、再保険を利用します。ところが、地震リスクについては再保険会社も慎重です。特に、日本とカリフォルニア州の地震の引受けにはかなり消極的です。極端に高い保険料を払わない限り、再保険会社も引き受けてくれません。

一般消費者は地震保険に入るしか方法がない。しかし、保険会社は引受けに消極的だ。このジレンマを解決するために国が考えたのが、1966年に始まった地震保険制度です。

国が全面的にバックアップしています。損害保険会社も一部リスクを引き受けますが、仕組みとしては国が95%以上を引受ける特異な保険制度です。しかし、国といえども青天井で引受けることはできません。そこで、現在は1回の地震で支払われる保険金の総額は、最大7兆円までと決められています。7兆円と言えば大変な金額ですが、それでも関東大震災級の地震が発生すると支払い切れない可能性があります。そこで、そのような事態を防ぐために、地震保険は加入できる金額を制限しているのです。

日本と同様に、地震の多い国では国や州政府が関与する地震保険制度があります。カリフォルニア州、ニュージーランド、台湾、トルコ、アイスランドなどです。カリフォルニア州は日本と同じように火災保険に任意で地震保険を付ける仕組みですが、台湾やニュージーランドでは火災保険と地震保険が半ば強制加入の実態となっています。各国ともさまざまな対策を講じていますが、いずれも保険として万全のものではありません。例え国が関与しても、地震リスクは保険では対応し切れないほど大きなリスクである、ということなのです。

地震保険の基礎を理解しよう

日本では地震保険への関心が高い割に勘違いしている人もいますので、ここでポイントだけ整理しておきましょう。

・地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯して任意で契約します
・保険金額には上限があり、火災保険の30~50%の範囲で任意に決められます(さらに、建物は5000万、家財は1000万の上限があります)
・支払は実際の損害額がそのまま補填されるわけではなく、「全損」「半損」「一部損」の3段階の査定により支払われます。たとえば、1000万円の地震保険に入っている場合、全損で1000万円、半損で500万円、一部損では50万円(5%相当)となります

 

繰り返しますが、地震保険に入っていても失った家を保険で建て直すことはできません。あくまで生活再建のための当面の資金を準備する、そのための保険であることを理解する必要があります。

地震保険はリスク・マネジメント的には入るべき保険です。しかし、保障額が制限されていること、そして保険料も決して安くないことから、加入に際してはいろいろと考えさせられてしまいます。

次ページさて、地震保険に入るかどうか?
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