英Nothing、最新スマホ「Nothing Phone (3)」で“光る背面”を廃止。新たに搭載したGlyph Matrixと独自OSで他社との差別化を図る

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OnePlusのスマートフォンは、「選ばれた人が使う」というイメージを持たせることで成功を収めた。そんな製品を生み出したペイ氏が創設したNothingの製品が、世間の予想を大きく超える独創的なデザインとコンセプトで多くの注目を集めるのは当然の結果と言えるだろう。

大手メーカーと異なるNothingのチャレンジ

歴代のNothing Phoneに搭載されてきた、この光るLEDであるGlyph Interfaceはユーザーの80%が常用するほど実用性やデザインが受け入れらていると、Nothing Phone (3)の発表会でペイ氏は説明した。しかし背面全体へのライトの内蔵はスマートフォン本体の設計に制限を与えてしまうし、一方ではライティングだけでは表現力の限界もある。そこで最新モデルは自社の顔だったGlyph Interfaceを捨て、新たな表現としてGlyph Matrixを採用し、まったく新しいスマートフォンの操作性や表現力を生み出した。

これは大胆な転換に見えるが、IT製品であるスマートフォンの技術は今も進化を続けている。例えばNothing Phone (1)が開発中だった2021年ごろにはまだChatGPTが生まれていなかった。当時のAIは「音声アシスタント」にすぎず、今の「AIエージェント」とは大きく異なるものだ。そしてAIエージェントをスマートフォンで多用するようになれば、スマートフォンに求められる機能やユーザーインターフェースも大きく変わっていく。

つまり、スマートフォンはまだ進化の途上にある製品であり、現在便利とされる機能も、すぐに陳腐化してしまうことがある。今やスマートフォンは単なる通信端末やコミュニケーションツールから、知的なパートナーへと進化しつつある。その過程で、いち早く他社にはない機能を取り入れ、それをデザインとして製品に落とし込む──こうした姿勢こそがNothingの強みであり、小さなメーカーでありながら市場で確かな存在感を示し続けている理由だ。

自社の強みを発揮した製品を送り続けるカール・ペイCEO(筆者撮影)

スマートフォン市場で圧倒的なブランド力とエコシステムを持つアップルと、革新的な技術力と幅広い製品ラインナップを誇るサムスンに対し、Nothingが正面から戦いを挑むのは容易ではない。しかし、Nothingならではの独自の発想や挑戦的な取り組みは、ほかの大手メーカーにはない個性を市場にもたらしている。こうした独自性を武器に、Nothingは今後も着実にその価値を高め、やがては大手メーカーと肩を並べるブランドへと成長していく可能性を秘めている。

ハイエンドモデルとして登場した今回のNothing Phone (3)は、先進国市場を中心に、これまで大手メーカーの製品を選んでいたユーザー層にも新たな選択肢として注目されるだろう。日本での発売時期は現時点で未定だが、今後の展開次第では日本のスマートフォン市場においてもNothingのプレゼンスがさらに高まることが期待される。

山根 康宏 携帯電話研究家・ジャーナリスト

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やまね やすひろ / Yasuhiro Yamane

香港在住。石油化学企業の製造・研究・国際貿易業務を経てからフリーのジャーナリストに転身。中国および海外のスマートフォンや通信事情に精通。取材範囲は自動車、スマートシティー、インダストリー4.0、リテール、デザイン、材料まで幅広い。年の大半を海外市場の市場調査および海外展示会・発表会取材に当てており、脚で稼いだ情報を武器とする。大手IT系メディアに定期的に記事を執筆するほか、海外通信事情などの講演も積極的に行う。

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