観測技術の向上で宇宙論も精密科学入り--『ざっくりわかる宇宙論』を書いた竹内 薫氏(サイエンス作家)に聞く
宇宙関連の啓蒙書の刊行が盛んだ。21世紀入りと前後して宇宙論に科学革命が起き、最新のモダン宇宙論は、これまで人類の知りえなかった宇宙の姿を明らかにしつつあるという。
──今、宇宙論の「大航海時代」に遭遇しているのですか。
ワクワクドキドキする新発見が毎月のように報告されている。宇宙論は20世紀の終わりにかつてないほどの革命を経験した。宇宙は加速膨張しているとか……。
──仮説やシナリオが多いとも。
宇宙論は幅広い。SFと区別がつかないところがあるが、たくさんあるシナリオのうちの少数のものが、現実世界と合致している。ただし、現実と合っていないシナリオも別の宇宙では現実かもしれない。われわれの住む宇宙だけが唯一の宇宙ではないからだ。それが知的好奇心を刺激する。
──別の宇宙?
この宇宙とは別に10の500乗個ぐらいの別の宇宙がありそうだ。地球のある宇宙でさえ、96%はわかっていないということがわかった。10の500乗分の1に4%を掛けた程度しかわかっていないとなれば、全然わかっていないと同じだ。
それでも、この宇宙の年齢や大きさがわかってきた。観測技術がようやく追いついてきたのだ。アインシュタインの理論によって1915年ごろに宇宙を理解する数式はできている。それから随分時間がかかって、ようやく観測態勢が追いつき、宇宙論は精密科学の領域に入ってきた。