観測技術の向上で宇宙論も精密科学入り--『ざっくりわかる宇宙論』を書いた竹内 薫氏(サイエンス作家)に聞く
──この宇宙は今、半径470億光年の広さがあるそうですね。
そう。地球の大きさはいわば空中に浮遊するゴミより小さい。このモダン宇宙論はほぼアインシュタインの業績だ。100人の物理学者が共同で作り上げるような研究成果を一人でやってのけた。
──アインシュタインで宇宙論の何が変わったのですか。
普通、人は宇宙の時間は一つ、悠久の時の流れがあると思っている。実はそうでなくて、時間は無数にあると。運動状態、重力の強さといった、さまざまな要因によって別の時間の流れがあることを発見した。無数にあると考えれば、どの時間の基準で計っているのか、明示しないと意味がなくなる。
また、時間と空間がダイナミックに変動するとも。アインシュタインの宇宙では宇宙も歪み、変化を続ける。星という重いモノがあると空間もたわむ。空間そのものも物理学の変数になる。それがアインシュタインの革命的宇宙論だった。
──最近は、ダークエネルギーをはじめ魅力的な用語が宇宙論に飛び交います。
観測が精密になってきて、この宇宙の96%は未知のダークエネルギーで占められているとわかった。その中身はモダンな宇宙論でもわかっていない。こういった、自分たちがいかにわかっていないかがわかったことは大きい。わかっていないことを認識できた、それが21世紀になっての宇宙論の特色ともいえる。