30分の熟考より「ひらめき」を信じることが良い判断を導くワケ――脳の専門医が教える《直感を大事にしたほうがいい理由》

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これらをずっと意識上に置いておくと、それがバイアスのような障壁になりますが、無意識下に沈むことで、発酵作用のようなものが起き、さらに深化したり、大きく成長したりするのです。

そして何か問題や課題に直面したとき、判断を迫られたときに、脳の緊急ボタンが作動し、無意識下に潜んでいたこれら有益な情報や知識が、「直感」として立ち現れるのです。

まずは、経験値や情報をたくさん身につける。そしてそこから一度離れる、忘れる、つまりは無意識化するということが、直感力をつける大きなポイントだと考えます。

直感が正しいかどうかの見極め方

直感の大切さと直感のメカニズムをお話ししましたが、かといって直感だけに頼っていては、判断ミスを防ぐことはできません。直感が誤っている場合も往々にしてあるからです。

直感の大前提として、無意識化した豊富な経験値と情報量を挙げましたが、それが十分でないのに、直感的なものがひらめく場合があります。

職人のような専門家の直感はかなりの信頼度があるといえますが、そうでない場合は必ずしも直感が正しいとは限りません。大事なことは直感的なものを感じた場合、すぐにそれを結論として判断せずに、少し時間をかけて吟味してみるということです。

私の場合は、直感がどういう状況のもとで降りてきたかを注意深くチェックします。すると、かなり判断を急がされていたり、ストレスや肉体的な疲れがある中で判断しなくてはならない場合があったりします。

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そのような一種の危機的な状態だと、脳はリスク回避のために、扁桃体経由の直感的な判断をする可能性があります。その場合の直感はどこかにムリがあることも多いので、そのまま鵜呑みにできないということになります。

その場合は判断を急がず、あえて一呼吸を置いてみることです。あるいは心身を少しリラックスさせることを試みます。ちょっと休憩したり、軽い睡眠を取る。それで改めて問題や課題を考えてみるのです。

右脳による直感ではなく、あえて左脳を働かせてロジカルに考えてみる。右脳と左脳のバランスを取ることが、結果的によい判断に結びつくと考えています。

「直感」と「論理的思考」の2つが両輪のように合わさることで、思いつきやひらめきが、れっきとした発明や発見、理論につながっていくのです。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。著書に、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続けるもっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)など多数。

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