30分の熟考より「ひらめき」を信じることが良い判断を導くワケ――脳の専門医が教える《直感を大事にしたほうがいい理由》
直感の背後には、積み上げられ、蓄積された経験や情報があるのです。それをロジカルに分析して体系化してアウトプットするのではなく、危機的状況に発動する脳を使って瞬時に最適解をはじき出す。この経験値と直感によって、職人は見事な作品を作り上げるわけです。
直感は何もないところから突然、生まれてくるのではありません。豊富な経験値と情報が存在することが大前提なのです。
経験や情報が直感の妨げになる
ただし、この豊富な経験値と情報はもろ刃の剣でもあるということを知っておいてほしいと思います。
というのも、経験値がむしろ新しい発想や気づきを邪魔してしまうことがあるからです。過去の経験値が既成概念や先入観になってしまい、思考の枠が狭まってしまうのです。そうなると、直感自体が働かなくなってしまいます。
そこで私が強調したいのが、経験値やたくさんの情報を持っている人は、一度そこから「離れる」ことが重要だということです。
誰しも自分が所有しているもの、獲得したものは大事なものだと考え、守ろうとする傾向があります。お金を稼ぐと貯蓄に回したり、家を買ってそこで暮らすようになると、簡単に手放すわけにはいかなくなります。
ものを所有するということは、そこに何らかの執着が生じるということでもあります。
これは知識や情報に関しても同じです。
自分が持っている情報や知識に執着が生まれ、先入観や既成概念のような固定化した意識を作り上げます。その結果、判断を誤らせてしまうことにつながります。
本来、経験や情報はたくさんあるに越したことはありません。ただし、それを意識から除き、離れること。いったん忘れてしまうことが大事だと考えます。
「離れる」「忘れる」というのは、2つの意味があります。1つは、重要ではない情報や知識は思い切って捨ててしまうこと。もう1つは、重要な情報は記憶に残しておくにしても、それに執着せず、こだわりを捨てるということです。つまりは、情報の断捨離だと考えてください。
執着や依存をしなければ、本当に大切な経験や情報は、脳の深い部分──長期記憶の奥底にしまい込まれます。さらに、そこから無意識の中に沈み込むものもあるでしょう。
長期記憶や無意識化された経験値や情報こそが、実は直感の大きな源なのです。
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