「またグエンかって言われると...」「もっと働けたら余裕のある暮らしができるのに」ベトナム人女子留学生が漏らす”日本での暮らし”の本音

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「それも私たちベトナム人のせいです。しょうがないですね」

リンさんは申し訳なさそうに言う。

日本でもっと学び、経験を積みたい

そういう悩みもあるけれど、ふたりはこの先も日本でがんばろうと決めている。リンさんは就職が決まったばかりだ。

「円安になったし、帰ろうかどうしようか迷ったこともあります。でも、いまベトナムに帰ってもなにもできないと思うんです。同級生はもう就職していて、差をつけられている。負けるじゃないですか。私、負けるの大嫌いですから、それなら日本で働いてもっと経験を積んで知識を増やしたい」

次のステップに進めるだけの自信やスキルを身につけるまでは、日本で仕事をしたいのだそうだ。

ハさんはまだ進路を決めかねている。実はデザイン系の専門学校を出たあとは、中国語の勉強をしているのだ。漢字を学んだことがきっかけだ。それに「漢字のイメージがデザインにも役立つ」のだという。

「それに、新しい言語を勉強するときは……」

「セカイ、ね」

リンさんが口を挟む。

「そう。新しい世界が広がる。もし3つの言葉ができれば、いろんな仕事ができるようになります」

ハさんはいま、空港などで日本語と中国語の通訳のアルバイトもしている。就職をしたいが、どの方面に進むべきか悩んでいる。

「給料も大事ですけど、自分のレベルアップに結びつくところかな……」

「ちなみに、ムロハシさんだったら大手と中小企業どっちに進みますか?」

唐突にリンさんに逆取材され、言葉に詰まる。まともに就職したことのない僕にとってその笑顔はあまりにまぶしく、胸をえぐる質問ではあったが「やりたいことができる職場ならどこでも」と、どうにか返答した。

まだまだふたりには話を聞きたかったが、彼女たちは勉強にアルバイトにVYSAの活動にと忙しい。異国の留学生生活を身体いっぱいで楽しんでいる。そのひたむきさや前向きさで、この国に元気を与えてほしいと切に思うのだ。

室橋 裕和 ライター

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むろはし ひろかず / Hirokazu Murohashi

1974年生まれ。週刊誌記者を経てタイに移住。現地発の日本語情報誌に在籍し、10年に渡りタイ及び周辺国を取材する。帰国後はアジア専門のライター、編集者として活動。「アジアに生きる日本人」「日本に生きるアジア人」をテーマとしている。主な著書は『ルポ新大久保』(辰巳出版)、『日本の異国』(晶文社)、『おとなの青春旅行』(講談社現代新書)、『バンコクドリーム Gダイアリー編集部青春記』(イーストプレス)、『海外暮らし最強ナビ・アジア編』(辰巳出版)など。

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