東洋経済オンラインとは
キャリア・教育

慶應SFCの学生の多くが間違えた「ベイズ理論」の難問。あなたは“論理的思考”が本当にできていますか?数字にだまされないリテラシーを磨くには

8分で読める
  • 今井 むつみ 慶應義塾大学名誉教授、今井むつみ教育研究所代表
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

しかしこの結論は誤りです。「そもそもこの病気にかかるのが1000人に1人の割合であること」(事前確率)をまったく無視しています。こうした重要な数字を無視した上で、多くの人は検査で陽性が出たことにショックを受けて、「自分はこの病気になってしまった」と思い込んでしまうのです。

では、検査薬に陽性反応が出たとして、実際に感染している確率はどれくらいになるのでしょうか。その確率は、以下の式で求めることができます。

(感染していて、かつ、陽性反応が出る確率)÷{(感染していて、かつ陽性反応が出る確率)+(非感染者の分布確率×非感染で陽性反応が出る確率)}

この式に数字を当てはめると、次の通りです。

(0.001×0.98)÷{(0.001×0.98)+(0.999×0.01)}=0.00098÷(0.00098+0.00999)≒0.0893345488

つまり、およそ8.9%です。

数字にだまされないために

このケースでは、検査をして「陽性」という結果が出ても、実際に感染している確率は8.9%にすぎない。

『人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学』(日経BP 日本経済新聞出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

この確率が理解できれば、陽性反応が出たからといってパニックになる必要はないのですが、結局人には、確率を正しく捉えることも、「1000人に1人の割合でしかその病気にならない」という背景情報を適切に考慮することも難しい。それで確率の理屈と計算の意味を理解せずに、感情的に結論づけてしまうことが普通、ということなのです。

この「ベイズ理論」に基づく確率の考え方はなかなか難解で、直感的に理解しにくいので、ほとんどの人はこの数式をさっと適用して確率を計算するということができないと思います。でも、世の中で起こっていることを合理的に考えるには非常に有益で、数字にだまされないためにも必須です。

インターネットにも詳しい解説がありますので、論理的・合理的な思考の一助として、この考えを理解しなじめるようにトレーニングしていただきたいと思います。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

キャリア・教育

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象