慶應SFCの学生の多くが間違えた「ベイズ理論」の難問。あなたは“論理的思考”が本当にできていますか?数字にだまされないリテラシーを磨くには
そうした方はおそらく、プロフィールから描かれたリンダの人物像をもとに、本来は「銀行員」の一部でしかない「銀行員で女性活動家」を選んでしまったのだと思います。
非常に目立つ一つ、あるいは少数の事例をもとに、「このタイプの人はこういう人だ」と職業や性別などの所属カテゴリを決めつけてしまう。そしてその決めつけは、「ある大集団の中の小集団に属する可能性を、大集団に属する可能性より高く見積もってしまう」という明らかな誤りさえも引き起こす。こうした思考を私たちは日常的に行っており、そしてそれが偏見のもとともなっているのです。
ディックやジャック、リンダの問題から見えてくるのは、私たちにいくら論理的思考や確率的思考ができる能力があるとしても、ちょっとしたことでその思考を無視し、「自分のスキーマに合うか」という一点で何かを判断してしまうことが起こりうる、という現実です。
賢いかどうか、勉強ができるかどうかに関係なく、人間はこのような思考をしてしまうことがあり、それを私たちは忘れてはいけないのです。
【確率③】感染している確率は9%?98%?極端な勘違い
ここまで、「私たちには確率を正しく捉える能力がある」ことを前提に話を進めてきました。しかしそもそも、私たちはどの程度正確に確率を計算して、その結果に基づいて合理的に判断することができるのでしょうか。次のような問題で考えてみましょう。
Aさんではなく、自分に置き換えて考えてもいいですね。感染症ではなく、1000人に1人がかかるがんとしてもいいでしょう。この確率のもとで「陽性反応」が出た場合、あなたはどう思うでしょうか?
たいていの人はパニックになります。「自分は98%の高い確率で、この病気なんだ」というふうに思ってしまうからです。
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