「静かなる分断」を食い止める方法。本音の見えない部下、協力しない“線引き社員”との向き合い方
私の会社では新入社員が入社したとき「トリセツ説明会」という場を設けている。「自分はこんな人です」という自己紹介に加えて、苦手なことや不機嫌になるポイント、手助けしてほしい点も含めて、自分の取り扱い方を伝え合う。
このような日々の仕掛けが、職場の空気を大きく変える。とくに育ってきた環境の違いで、若い人の中には周囲の様子をうかがい自分から行動しない人や、人見知りタイプの人も多い。自分たちの感覚で自発的に動かない人はダメだと決めつけず、「場をつくる」お膳立てやきっかけづくりも必要だ。
早期に離職する若手についても理由はさまざまだが、中には入社前に聞いた話と実際の仕事内容が違った、という人もいる。違うと感じた時点で相談があればいいのだが、勝手に諦めて突然、去っていく。極端な例かもしれないが、転職のハードルが下がっているのは確かだ。
ありのままでいる勇気
こうしたときも、本音を語り合う風土、お互いの気持ちを持ち寄る対話があれば、素直な気持ちをつぶやけるかもしれない。大切なのは、いろいろな価値観や捉え方があるからこそ、互いの感情と思いの背景を知ることを大切にしたいという姿勢を、経営から現場までが共有することだ。

そのためにも上司には、自身が「ありのまま」でいる勇気が求められている。上司自身が「苦手なことがある」「正直、悩んでいる」といった言葉を素直に発することが、部下の本音を引き出すカギになる。「自分のことを話していいんだ」「助けて、と声を上げていいんだ」と思える環境づくりこそが対話の第一歩となる。これは「オーセンティックリーダーシップ(自分らしさを発揮するリーダーシップ)」という考え方にも通じる。
静かに進む職場の分断を止め、エンゲージメントを高めるカギは、対話にある。まずは上司が見えない壁を恐れず、相手と向き合っていってほしい。
(構成:吉岡名保恵)
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