「静かなる分断」を食い止める方法。本音の見えない部下、協力しない“線引き社員”との向き合い方
同様に、部下が問題を起こしたときも、精神的な余裕を失い、追い込まれていたことが影響している場合がある。部下の心理状態にまで目を向けなければ、行動の本質を正しく認識できない。個々の考え方や背景を理解すれば、見えてくるものも違ってくる。
部下との向き合い方のスタンスは、議論ではなく「対話」をすることだ。人は無意識に、よい・悪い、正しい・正しくないと判断し、自分の価値観を押し付けようとする。とくに部下と話すときは上から目線で一方的になりやすい。相手から、この人は話をわかろうとしない人、と判断されれば心は開いてもらえなくなる。
向き合う中で「自分の価値観や考え方と違う」「自分自身の当たり前は他人にとっての当たり前ではない」と気づかされるかもしれない。その前提の下、完全に同意はできなくても、お互いにわかり合える部分を少しずつ増やしていく。
そんなことを丁寧に、いちいちやっていられない、と思う人もいるだろう。それでも対話を避けず、向き合おうとする気持ちは忘れず持ってほしい。その意識さえあれば、部下のことをちゃんと見ているか、固定観念にとらわれていないかなど、つねに自分を省みて途中で軌道修正していける。
パワハラと捉えられてしまう事態をおそれ、部下を厳しく注意できない人もいる。しかし上司が萎縮していては、ますます職場内の分断が進んでしまう。
「場をつくる」お膳立て
大切なのは、上司も考えやスタンスを部下たちにまず開示すること。その背景にある意図や思いをしっかり伝えたら、厳しい言葉も納得感のあるものになる。お互い歩み寄るために気持ちを伝え合う努力は恐れずにやりたい。
ただ、こうした対話は上司と部下の関係だけに任せていては限界がある。むしろ組織全体としてコミュニケーションの文化や風土を構築し直すべきだ。例えば会議の冒頭で10分から20分ほどの時間を使い、「1週間の出来事を振り返ろう」と呼びかける。その中で1人3分程度ずつ、起きた出来事と自分がそのとき何を感じたか、事実と感情を分けて話してみる。
この対話を通じて、人によって感じ方が違うことに気づく。毎週続けていくうちに、だんだん心を開いて話せるようになったり、メンバーからの指摘も素直に受け入れられるようになったりする。
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