さまざまな環境の子どもたちが通う《教育困難校》に通った彼が見た世界 "大学受験を意識した"大きなきっかけ

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「周囲に家庭のことを聞かれても言い淀む子が多かった」と当時のことを振り返る大山さん。

そんな大山さん自身は中流家庭の出身です。

彼がこの学校を選んだ理由は、小学校低学年から中学校の後半まで長期間にわたり引きこもり状態だったためでした。

「学校でクラスメイトが吐いてしまったとき、それを周囲のクラスメイトが騒いでいたのを見て、周りの目線が気になったことがトラウマになり、外に出るたびに過呼吸になっていた」とつらい過去を語る大山さん。

そんな彼にとっても単位制であり、夜間部のあるA高校は、「無理なく通える学校」でした。

同世代のコミュニケーションがまったくできないまま高校に入った大山さんは、クラス会や生徒会の仕事を率先してすることで次第に環境に適応していったものの、「最初のほうは経験やコミュニケーション能力の不足で一般的な人間関係に馴染めなかった」と語ります。

生徒の属性は、10人いたら不良学生が1人、精神的な問題を抱えていそうな感じの人が4〜5人、残り4〜5人が人とコミュニケーションを取るのが難しいタイプの人だったそうです。内申点が必要ない学校だったこの高校は、引きこもりが社会問題になり始めた時期に受け皿としての役割を果たしていました。

望まぬ妊娠や、パパ活をする生徒も

都心部でも定時制の学校が少なかった時代背景もあり、地元の通学生は少なく、隣県から通う人も珍しくなかったA高校。片道3時間ほどかけて通う人もいたそうです。

近くから通学している学生は、働いて学費や生活費を稼ぎながら高校を卒業しようとしている人も珍しくありませんでした。21時に夜間部の授業が終わってからは、暗い中、駅の近くに立って大人の男性を待っている人たちもクラスに2名程度いたそうで、中には望まぬ妊娠をして退学した人もいたようです。

「自転車で帰っているとき、同級生が駅前に立っているのを見て、『なんでこんな時間までいるの?』と聞いたんです。そしたら、『パパを待ってる』と言われました」と、実際に同級生が援助交際をしていることを聞いた当時の出来事を、大山さんは語ります。

また、おとなしい生徒が多かったこともあり万引きや盗難事件などは聞いたことはないものの、中には自殺を図った生徒もいたそうです。

高校進学のために中学校3年生の3学期に復学した大山さんは、復学してから受けた最初で最後の定期試験は5教科で500点中9点でした。

A高校の授業については、どの科目でも中学校1年生のレベルからやり直してくれたため、中学で得る基礎的な知識がすっぽりまるまる抜けていた大山さんは非常に助かったそうです。

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