待望の「ヒット商品」を出したのに”経営危機”に陥る企業の落とし穴 「うちはこの商品で、当面は食べていける」「俺は成功した」はNG!

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これにより、同社の業績は急激に悪化しました。テナントビルをはじめ保有資産を切り売りしたり、大量の希望退職者を募ったりと、生き残りを図らなければならない経営危機に陥りました。

この会社が苦境に陥った直接的な理由は、海外ブランドとのライセンス契約が終了したことかもしれません。しかし本来、どんなヒット商品でも必ず寿命があり、また、それがいつくるかはわからないので、常に寿命がきたときに備えておく必要があるはずです。その備えを怠っていたことが、同社の危機を呼び込んだ本質だといえます。

そして同社のように、ヒット商品が出たあとに、逆に経営危機に陥るというパターンは、多くの中小企業でも見られます。

ヒット商品が生まれたらその商品の寿命を設定する

ヒット商品が出たあとに会社が経営危機に陥るのには、いくつかの理由があります。

まず、「うちはこの商品で、当面は食べていける」と感じることで、社長をはじめ社内の空気が緩んでしまうこと。中には「俺は成功した」とばかりに、慢心して仕事をおろそかにしてしまう社長もいます。

セミの卵が幼虫になり、さなぎを破り成虫になっていく様を「蛻変(ぜいへん)」といいますが、経営もいつも新しい価値観に向けて社長・会社が、「脱皮・変身・成長」を繰り返していくようにすることが必要です。それなのにヒット商品を生んで、うちは成功したなどと考えた途端、経営にとってもっとも大切な「脱皮・変身・成長」から遠ざかっていき、没落への道を進んでいくのです。

次に、売上を最大化するために、社内体制をヒット商品の製造・販売に最適化し、社内リソースを集中させてしまうこと。そんな体制にしてしまえば、いずれヒット商品の寿命が尽きたときには、すべてが逆回転します。

ヒット商品は放っておいても売れます。知恵を絞って工夫して売る努力が必要ありません。だから、ヒット商品だけに頼っていると、新製品開発力、新規営業力など、会社を成長させるための力が全体的に落ちていきます。そのため、ヒット商品の寿命が尽きたとき、それに代わる新たな収益源をすぐに生み出せなくなるのです。余裕のある大手企業ならともかく、中小企業であれば一気に倒産に進む危険もあります。

本来、ヒット商品に恵まれるのは幸運なこと。でも問題なのは、それに頼り切って安心してしまう社長や社員なのです。

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