上場を視界に捉えた79歳起業家の商売哲学 食材卸サイト「Mマート」で消費者向け販売へ

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村橋氏は新宿・歌舞伎町でお好み焼き屋を営み、店で仕入れた食材を家庭でも使っていた。そのお好み焼き屋を最近閉店して店の食材が使えなくなってから、夫人が百貨店で購入した「高級和牛」を自宅で食した松橋氏は愕然とした。「おいしくなかった」からだ。

「一般の消費者は高級品として、この程度のものを食していたのか」。そう思った松橋氏はがぜん、一般消費者向けのサイトの立ち上げに動き出したのだ。

80歳過ぎての上場目指す

村橋氏は今年79歳を迎えたが、Mマートは株式上場の準備を具体化させている。上場を目指す理由について村橋氏は「懸命にやってきて考えもしなかったが、ある日、自分の年齢に気が付いたから」と語る。自分がいなくなっても、Mマートの事業を続けなればいけない。実際、売り手業者の中には「Mマートがなくなったら、私も事業を閉じる」という人も少なくない。

事業継続のために、たどり着いた結論が株式上場だった。資金作りが目的と批判されるような株式上場のケースが散見されるだけに、村橋氏が到達した株式上場の意義は尊い。上場企業がパブリックと言われるゆえんの再確認でもある。

現在、上場予定まで2年を切った。実現すると、村橋氏は80歳を超えている。おそらく、高齢創業者による株式上場としては「ギネスブック」ものだ。東芝事件では、利益水増しの行為の代名詞のように使われて泥をかぶったチャレンジという言葉も本来、こういうことに使われるべきものである。79歳のチャレンジに注目したい。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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