上場を視界に捉えた79歳起業家の商売哲学 食材卸サイト「Mマート」で消費者向け販売へ
Mマートがこのほど本格開始したBtoCサイト「C-joy」もまた、業界常識打破の面がある。それは高級食材の厳選だ。というのも、既存のBtoCサイトで商品を買おうと思っても、商品アイテムがあまりに多いからだ。
たとえば、高級牛肉を買いたいと思い、サイトで食肉格付けの優良ランクである「和牛、A5」と指定し検索すると、数千種類の品目が画面に出てくる。一般消費者のほとんどは素人だ。それを見極める眼力は乏しい。しかも、長年の仕入れ体験で「見る目」を培った村橋氏や同社の社員たちからすると「写真を見ただけで、これが高級品?」と首をかしげる商品も少なくない。そこで、考え付いたのが消費者が選ぶことに悩み、疲れないオイシイ商品の絞り込み。「どの商品を選んでも間違いない」というビジネスモデルだった。
それだけではない。C-joyのサイトをみると、商品写真の横には必ず、解凍方法、調理法などの説明が懇切丁寧に記されている。「せっかくのオイシイ食材も調理法などを間違えると、台無しになる」からだ。この説明書は注文した商品が届くと、必ず商品と一緒に入っている。
アンケートを基にラインナップを見直す
C-joyの独特な仕組みはまだある。消費者アンケートがそれだ。「我々はプロフェッショナルとしての厳選で商品構成しているが、顧客の声を無視することはきできない」という発想に基づいている。具体的には、商品買い上げから8日後に顧客にアンケートメールを送付する。高級品質として「ふさわしい」「ふつう」「ややふさわしくない」「これはラインナップから下げたほうがいい」といった5段階評価であり、顧客による採点が低い商品はラインナップから削除する仕組みだ。
村橋氏はこれまでBtoCには消極的だった。実は、Mマート立ち上げから4、5年後ほどの時期に、「実質的なBtoC」ビジネスを行なった経緯がある。全国の主婦層からの購入要望に応ずる形で、個人ではなく「主婦連」、あるいは「マンションの管理組合」といった組織名義での購入の窓口を開いた。ところが、百貨店からの中元、歳暮などの梱包しか知らない購入層は業務用と同じ梱包スタイルを手荒く感じて、クレームを受けた。
しかし、手間のかかる梱包を業者に強いるわけにはいかない。そこで、同社はその後「実質的なBtoC」をストップし、業務用、つまり、BtoBに徹していた。それが今回、BtoCに乗り出したのはなぜか。
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