3年ごとの中期経営計画の作成に注力する企業がはまりがちな落とし穴とは何だろうか?

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もうひとつ例を挙げましょう。日本の百貨店業界です。

マクロの栄枯盛衰にどう向き合うか

この業界は、1970年代の前半までは、どの企業も右肩上がりです戦略が機能したと言うよりは、市場が成長したのです

一方でそれ以降は、全体が下り坂となっています。では何が変わってきたと言うと、百貨店の衰退は、総合スーパーの台頭と時機がかぶることがわかります。

では、総合スーパーがなぜ台頭できたのか。答えはマイカーブーム、モータリゼーションです。街の中心地の百貨店より、広大な駐車場を備えた総合スーパーのほうが便利だと、人の流れが変わってしまったのです。

当時の百貨店の経営者からすれば、自社の営業努力とか、競合他社への対応といったレベルでなく、与件が変わったようなインパクトがあったはずです。

産業にはこうしたマクロレベルの栄枯盛衰があります

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自分が事業を行っている立地、すなわち、誰に向けて、何を売るかということ自体が揺らいでしまう。立地が揺らいだとき、そこにとどまるか、あるいは事業そのものを入れ替えるかという選択を迫られます

長く生き残っている企業は、その過程で主力事業を入れ替える作業を怠っていません。会社名と事業内容にギャップがある古い会社を見たことはないでしょうか。

それは、祖業と違うことをしている、つまり立地を入れ替えてきた証しであり、そうした決定こそ戦略と呼ぶべきものです。

こうした視点から見たときに、皆さんの会社はいかがでしょうか。戦略とは呼べないものを戦略と呼んではいないでしょうか

企業の生き残りにとっては、3年タームの中計をいくつ作るかよりも、30年に1回やってくるような大きな変化を乗り越えるために有効な布石を打てているか否かが大事なのです。

三品 和広 神戸大学名誉教授

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みしな かずひろ / Kazuhiro Mishina

1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授、神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て現職。著書多数。経営幹部候補生のために、日本企業のケース464事例を収録した『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)が2022年5月に完成した。近著に『実戦のための経営戦略論』

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