3年ごとの中期経営計画の作成に注力する企業がはまりがちな落とし穴とは何だろうか?

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では、どうすれば、点が線になるのか。ジョブズは、自分の情熱にしたがって取捨選択していれば、結果としてつながるものだと言っています。

思うに経営も同様で、本当に好きなこと、大切なことを追求する人が居続けて、その周りにみんなが集まるという形をとらない限り、点を線にすることは難しい

研究者として30年以上、日本企業の足跡を見てきた立場からすると、点がつながって、美しい線を描いた(戦略が機能した)企業は、あまりないと言わざるをえません。

ほとんどの企業の中計が、チグハグ、バラバラになっています

中計の表向き、後ろ向き、内向きな性質

中計では、勢いのいい右肩上がりの計画数値が描かれます。しかし3年後の着地点を見ると、最初の出発点と変わっていない。これを繰り返すから、中計の目標数値はまるで工場ののこぎり屋根のようになります。

20~30年にわたって企業の足跡をたどると、有名な企業でも、こうした「のこぎり屋根」を描いてきたところが多い。そんな残念なことが起きています。

これは、中計が持っている、表向き、後ろ向き、内向きな性質によるものです

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表向きとは、3年という区切られた時間で成果を出さなくてはいけないことから、すぐできることに目が向くということです。逆に言えば、深いところにメスが入っていません

後ろ向きとは、すでに存在する部署に作成させるため、未来に向かって、まだ存在しない事業には目が向かないということです。それでは過去からブレークできません

内向きとは、いったん計画ができると、目標達成に向けて目が点になり、窓の外で何か新しいことが起きていても、誰も感心を示さなくなるということです

上層部が予実管理を厳しくすればするほど、視点は足元に落ちていきます。誰も遠くを見据えないどころか、いま起きている事象にさえ目が向かなくなります

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