一方で、戦略はそれとは真逆です。数字を作れそうな、目の前の魅力的な誘惑に屈することなく、あえてそれには手をつけない。もっと遠い未来に向かって決定打を仕込んでこそ、初めて戦略になるのです。
しかし、そこまで語っている中計を、私は見たことがありません。
中計の本当の問題とは
企業の成長は、それ自体は難しいことではありません。ダンピングして利益を犠牲にすれば、いくらでも売り上げは増やすことができるからです。
ただ、拡販成長を目指して、今までリーチしていない顧客にリーチしようとすれば、客筋はどんどん悪くなり、利益率は犠牲になっていきます。
それなのに、多くの中計は売り上げも利益もどちらの数字もとりにいくことになっている。競合他社は現状維持と想定して。
上層部がそんな無理な方針を出せば道理がひっこんで、社員は黙るしかないことになりがちです。
一方で、中計には無理があるという声も聞かれます。
最近で言えば、リーマン・ショック、コロナ・ショック、トランプ・ショックと、事前には想定できないショックが頻繁に訪れるので、せっかく中計を作ってもムダになると言うのです。
しかし、先が読めないことは、中計の本当の問題ではありません。
本当の問題は、過去と現在と未来が整合していないという意味でチグハグなこと、また異なる部署間で連携がとれていないという意味でバラバラなことです。
アップルを創業した故・スティーブ・ジョブズが行った、「コネクティング・ドッツ」という有名なスピーチがあります。
ジョブズは言います。人は人生のなかでいろいろなことをするけれけども、そうしてやりちらかしたこと(点)が布石となり、後から振り返ると、つながって線になると。
このスピーチのポイントは、「後から振り返ると」という部分にあります。未来を読んで、事前に点をつなげられる人などいないのです。
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